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» 2014年05月30日 08時00分 UPDATE

2020年のCIOとIT部門の役割 現実課題を打開するヒント

ITでビジネス貢献――IT部門の“あるべき姿”として長らく提唱されてきたメッセージだが、その実現のためにCIOがとるべき行動とはなにか。日本HPの山口CTOに聞く。

[國谷武史,ITmedia]

 ガートナー ジャパンが先頃発表した「2014年上期国内IT投資動向」によると、企業のIT支出額は横ばいながらも、その使途は従来の「ビジネスの維持・継続」から「変革・成長」にシフトしつつあるという。これまで多方面から企業のIT部門が果たすべき役割について「ITによるビジネス貢献」が提唱されてきたが、その実現のためにCIOはどうITをリードしていけばよいか。日本ヒューレット・パッカード 執行役員 最高技術責任者の山口浩直氏に聞く。

激変するマーケットと企業の姿

tk_hp01.jpg 日本ヒューレット・パッカード 執行役員 最高技術責任者の山口浩直氏

 2020年という直近の節目に向けて、山口氏はまず世界のマーケットの構造が劇的に変化するだろうと指摘する。世界人口が今まで以上が増えていく中、特に「アクティブシニア」と呼ばれる50〜75歳の世代がその増分の1割を占めるといい、モバイルやソーシャルといった新しいツールを当たり前のように使いこなす若い「デジタルネイティブ」世代の社会進出も加速する。購買力の高い中産階級は、従来の先進国中心から新興国中心へと変わっていく。

 また、新興国市場を中心に都市化も急激に進み、環境問題などが深刻化すると予想される。企業にとってこうした様々な変化は大きなビジネスチャンスになるものの、そのためには企業自体にも変化が求められる。そこでITをどう生かすべきか――IT部門やCIOが自らの役割を変革するヒントを探ることができると山口氏はみている。

 山口氏は2020年の企業像を次のように挙げる。

  1. 業務環境のバーチャル化が進む
  2. 「Chief Listenning Officer(顧客の声をつかむ責任者)」が登場する
  3. 必要なデータを見極める力が必要とされる
  4. 人口構成の劇的な変化から生じるビジネスチャンスをつかむ
  5. 社会変化に伴う企業評価指標の変化に対応する
  6. 新たな人材活用を考慮した人事戦略が求められる
  7. IT部門は「専門技術者集団」から「ビジネスプロセスの技術者集団」になる

 1については、「日本HPで働く5000人のうち3000人がフリーアドレスであり、時間や場所を問わない働き方が日本でも定着しつつある」(山口氏)というように、既に顕在化している。2についても、新規ビジネスへのビッグデータ活用などが好例だろう。5では例えば、株価に基づく企業時価総額といったもの以外の新たな評価軸の重要性が高まるという。6は、高度なスキルを持つ人材を柔軟に活用していくというものだ。

CIOの役割

 上述した市場や企業におけるこれからの変化に備えて、CIOの役割はどうなっていくのか。山口氏は7つのポイントを提起する。

  1. ビジネスを変革する
  2. ノンコアを分離する
  3. 無数の小規模企業やプロフェッショナルと協業するための環境整備
  4. 巨大システムを最適化するソリューションの構築
  5. 「IT」の「I(=情報)」に注目する
  6. 「個人に最適化されたIT」「つながるIT」とプラバシー/セキュリティの両立
  7. リスクのコントロールとパフォーマンスの向上

 企業におけるITの位置付けは、現在に至るまで「バックエンドの側からビジネスを支える」ことが中心だ。もちろん、これも「ビジネスへの貢献」という役割では重要だが、山口氏の提起するポイントでは競合優位性の確立や業績の向上、新規ビジネスの立ち上げといった企業の成長に不可欠なものをIT主導で実現していくという観点が含まれている。

 「例えばビッグデータのような新しいソリューションは、幾多のベンチャー企業から提供されるようになっていく。CIOやIT部門は、自社のビジネスに貢献してくれる存在、あるいは情報などを見抜いていける『目利き』となるべきだ」(山口氏)

 CIOとIT部門は会社のビジネスをITでリードしていくための新しい環境作りに専念することが重要であり、そのためには、IT予算の7割とも8割ともいわれる既存のIT環境の維持(運用や保守など)に費やす資源の比重を、新しい環境作りにシフトさせる必要がある。

 HPはグローバルIT企業へ変革していくために、まず業務プロセスの標準化と集約化を進めた。同社は2000年代に入って多数の企業を買収・統合してきたが、それらのリソース全てを統合し、新規ビジネスとして世界規模で展開していく必要があったからだ。

tkhp02.jpg HPにおける業務やシステムの標準化への取り組み

 人事系を例にみると、業務プロセスの棚卸しによって95%の業務を共通化できることが分かり、プロセスの標準化とそれに伴うシステム環境の刷新を図った。データセンタースペースやサーバ数、ストレージが6割ほど削減され、その原資は同社の新たなビジネスに割り当てられている。

 「『日本では難しい』という声は多い。当然ながら業務プロセスの変革は、業務を標準化してからシステムを標準化していくため、業務部門とIT部門の相互協力が大事。その途上では『今まで動いていたものが使えない』といったフラストレーションが生じ、それらがIT部門に寄せられてくる。それを乗り越えるにはCIOだけでなく、CEOを巻き込んだトップのリーダーシップも不可欠になる」(山口氏)

 このプロジェクトが行われていた当時、山口氏は日本HP プリセールス部門のカントリーマネジャーの立場にあった。例えば、日報システムの標準化ではアジア、米国、欧州でバラバラだったシステムを統一することになったが、各地のプリセールス担当者が選定作業にあたり、米国のシステムをベースにすることになったという。

 「使いなれた旧システムを廃棄し、データを移行させ、ユーザートレーニングを経ていく中では不満も多かった。しかし、結果的に新しいシステムになったことで、ITを文房具のように活用して新たなビジネスに専念できる環境へと変わることができた」(山口氏)

ITがボトルネックではいけない

 IT部門が自らの役割を変えていくには、これまでの意識のままでは難しいだろう。既存のIT環境の維持から新しい環境作りに向けて行動するには、ビジネスというITの外側に視野を広げていく必要がある。CIOはIT部門のメンバーに向けて新しいビジョンを提示し、「なぜ必要か」「どうしていくか」といった意識をIT部門全体で共有できるようにすることも求められる。もちろん、新しい働き方やキャリアパス、そのためのトレーニングなども欠かせない。

「IT部門は業務部門の依頼へ真剣に応えようと努力しているが、そのために時間を費やし過ぎてしまうようなこともあり、IT部門がボトルネックのようにみられてしまうこともあった。競合に勝つにはスピードが大切で、最高のスピードとは『提案型』。業務部門が求めるより先に新しいサービス、ITの力を提案して価値を感じてもらう。これが究極のアジリティ(俊敏性)といえる」(山口氏)

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