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» 2015年02月24日 08時00分 UPDATE

農業IT×ロボット:日立がチャレンジする「自動運転トラクター」は、日本の農業を救えるか? (1/2)

高齢化や後継者不足に伴う農家人口の減少など、日本の農業が抱える課題の解決に向け、「農業IT」への期待は高まっている。日立とヤンマーが協力して開発を進める、自律操縦機能を備えたトラクターは、これからの農業にどのような影響を与えるのだろうか。

[池田憲弘,ITmedia]

 農業従事者の高齢化や後継者不足に伴う農家人口の減少、耕作放棄地の増加など、日本の農業が危機的状況にあると叫ばれて久しい。そのような状況で、近年期待されているのが“農業のIT化”だ。一昔前まではITと縁遠い産業だったが、生産性向上、効率化などを掲げ、大手ITベンダーのソリューションが話題になることが増えてきた。

 各社が展開するのは農地や農作業、作物を管理するといった情報管理ソリューションが主なものだが、農業でITが活躍するのは“管理”だけではない。最近、注目を浴びているのは自動化、特にロボットを生かした農業だ。作業内容を指定すれば、自動的に農機が作業を行ってくれる――。日立製作所が今、そんな技術開発に挑戦している。

 同社の社会イノベーション・プロジェクト本部が手掛けているのは、衛星による位置情報を使い、自動運転を行うトラクターだ。総務省委託事業のもと、農機大手のヤンマー、測位技術大手の日立造船と協力し、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州で実証実験を行ったところ、誤差5センチという高い精度での自動運転に成功したという。

photo 日立製作所とヤンマー、日立造船が共同で開発した「自律走行型ロボットトラクター」。位置情報を基に、無人で自動運転を行っている

“誤差5センチ”の精度が必要な理由

 実験で誤差5センチという精度を目指したのには理由がある。この実証実験は、植えた稲と稲の間をタイヤが通る“条間走行”を想定した自動運転の試験だが、これには高い精度が必要になるという。

 「稲と稲との距離は一般的に40センチ程度です。トラクターのタイヤ幅が30センチあるので、両側に5センチずつしか余裕がありません。誤差5センチという精度を保たなければ、トラクターが稲を踏んでしまいます。アメリカなど広い農地があるなら話は別ですが、狭い農地であれば、このレベルの精度が必要とされるのです」(日立製作所 社会イノベーション・プロジェクト本部 ソリューション・ビジネス推進本部 菅原敏氏)

 今回の実験では位置情報測定のため、GPS衛星3機に加えて準天頂衛星「みちびき」を使用したという。みちびきは日本、東南アジア、オーストラリア上空を通る軌道を採用している。日本上空に衛星があるときなら、衛星からの信号がユーザーの真上から発信されるため、山やビルといった障害物にじゃまされることなく受信できるのが大きな特長で、いわば「日本版GPS」とも言える存在だ。

photo みちびきの軌道。日本、東南アジア、オーストラリア上空を通る(出典:JAXA)

 従来のGPS衛星から測位データを受信する方式(精密単独測位方式)では10〜20センチの精度が限界とされているが、本実験ではGPS信号に加え、GPSの測位情報を補正する高精度な測位信号(LEX信号)を使うことで精度を高めた。今回の実験では、このLEX信号をオーストラリアに設置されている、簡易的な電子基準点から収集した位置データを基に作成し、準天頂衛星を介してトラクターに送信した。

 とはいえ、LEX信号を使った測定方法でも誤差5センチというのはほぼ理論値という。2014年11月末に行った最初の実証実験は成功を収めているが、「初回の実験でいきなり理論値が出たのには驚いた」(菅原氏)。今回の実験では、準天頂衛星システムで高い測位精度を導くための測位方式を検討するのも目的の1つとしている。現在は日立造船、オーストラリアの研究所、JAXAが提供する3種類の方法を検討しているところだという。

 2015年1月には、稲の生育状況をこの自動運転トラクターで計測する実験を行うなど、複数の農作業で使えるかどうかを実証しており、実験は2015年3月までを予定している。農作業の自動化が実現すれば、生産性が大きく向上するのは間違いない。今後は、実験結果を基にオーストラリアでの事業展開を目指す。

photo 右側に展開している生育センサー(写真内左端)で、稲の水分量を計測するという。ちなみにこのトラクターはヤンマーが北海道大学に置いていたもので、1カ月かけて船でオーストラリアに運んだそうだ
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