iPadでさらなる「おもてなし」、資生堂のデジタル化戦略とは?IBM InterConnect 2015 Report

ラスベガスのInterConnect 2015カンファレンスは2日目を迎え、資生堂の「ビューティータブレット」活用事例が紹介された。日々顧客と接するビューティーコンサルタントは、資生堂ブランドを顧客に伝え、その満足度を高める大切な役割を担っている。

» 2015年02月25日 08時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]
接客で活躍する資生堂のビューティータブレット

 米国時間の2月24日、装いも新たになったネバダ州ラスベガスの「InterConnect 2015」は2日目を迎え、モバイルやアナリティクスを中心とした幾つかの顧客事例やアライアンスが発表された。目玉は、明日のジェネラルセッションでも登壇とデモが予定されている資生堂の「ビューティータブレット」だ。

 資生堂は1872年、つまり明治5年に日本初の洋風調剤薬局として銀座に生まれた老舗化粧品メーカー。今や、おもてなしの心とともに提供される高い品質の製品は、世界89の国と地域で顧客の信頼を勝ち得ている。

資生堂の関根近子執行役員常務

 その最前線で活躍するのがビューティーコンサルタントだ。昨年、誕生80周年を迎え、その歴史も長い。現在、国内だけでも1万人に上る彼女たちは、資生堂ブランドを顧客に伝え、その満足度を高める大切な役割を担っている。資生堂では、1990年代からノートパソコンや携帯電話を業務端末として支給し、日々顧客と接する彼女たちを支援してきた。2013年には、iPadを1万台配布するという大胆な手を打ち、勤怠管理や業務日報、日々のコミュニケーションからメイクアップシュミレーターやスキンケアなどのコンサルまで、このビューティータブレットで行えるようにした。

 資生堂の関根近子執行役員常務は、「ビューティーコンサルタントは日々、おもてなしの心をベースとした接客を行っており、新しいモバイルアプリは彼女たちの活動と顧客満足度向上を支える重要なツールだ」と話す。

モバイルは破壊的技術だがセキュリティなどの懸念も

 顧客とより良い関係を築き、社員の意思決定を迅速化できるモバイルは、さまざまな業界でそれまでのビジネスを一変させてしまう破壊的なテクノロジーの代表格だ。昨年10月、Forrester Consultingが調査したところ、向こう1年で約半数の企業や組織が6つ以上のモバイルアプリを開発する計画だという。このように企業がこぞって取り組むモバイルだが、端末の多様化やセキュリティに対する懸念はもちろん、既存システムとの統合にも課題があり、実に85%の企業が20近いバックログを抱えているという。

 資生堂ではこうした課題を解決し、モバイルアプリの開発促進と管理性を高めるため、「IBM Mobile First Platform」を採用した。このIBM Mobile First Platformは、さまざまなデバイス向けアプリを統合的に開発・運用できる「Worklight」や個人所有の端末などもセキュアに管理できる「MaaS360」を核とし、モバイルに関連したセキュリティ製品やWebSphere製品などをプラットフォームとして仕立て直したものだ。

 IBM Mobile First Platformのプロダクトマネジメントを務めるマイケル・ギルフィクス副社長は、プラットフォーム化の狙いとして、以下の3つを挙げる。

  1. モバイルアプリの開発を促進する
  2. 社員が企業のデータに柔軟かつ安全にアクセスできるようにする
  3. モバイルアプリを通じて企業のデジタルブランド確立を支援する
Mobile First Platform担当のギルフィクス副社長

 「センチメント分析などを駆使してアプリの出来不出来をフィードバックし、継続的な改善に役立てる機能は、モバイルアプリの世界では欠かせないだろう。データベースの同期機能も強化されており、オフラインであったり、出張中の使い勝手も大きく改善される。また、GPSだけでなく、ビーコンによるインドアのロケーション情報を生かしたアプリも開発できるようにした」とギルフィクス氏は話す。

 IBM Mobile First Platformで資生堂が開発したモバイルアプリでは、ビューティーコンサルタントが情報交換したり、互いに学び合うためのコミュニティー機能も提供する。接客応対のヒントやコツ、業務からの気づきなどを共有することでチームとしての一体感を築く一助としたり、人材育成やサービス向上に役立てるのが狙いだ。さまざまな情報を組み合わせて解析すれば、成功例を導き出すことも夢ではなく、IBM Watsonテクノロジーの応用も楽しみだ。

 今回は1万台のiPadを配布したが、モバイルテクノロジーの進化は日進月歩だ。これまでにも携帯端末の進化とともにさまざまなノートパソコンや携帯電話を試行錯誤しながら活用してきた経験から、資生堂としては特定のデバイスやOSに過度に依存することへの懸念もある。その点、スタンダードなHTML5でもiOSにネイティブでも統合的にモバイルアプリを開発・管理できるIBM Mobile First Platformは、資生堂により長期的な視野に立ったソリューションをもたらすだろう。

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