マイナンバーカードの「裏」半径300メートルのIT

2016年1月から公布される「個人番号カード」、基本4情報に加えて顔写真までついて運転免許証よりも取得ハードルの低い身分証明書だね。と思っていたら大きな落とし穴がありますよ。

» 2015年06月23日 10時00分 公開
[宮田健ITmedia]

 2016年1月から、社会保障や税、災害対策の行政手続きにマイナンバーが必要になります。住民票を持つ全員に12桁の「個人番号」が付与されます。この番号は、2015年10月以降に氏名、住所、生年月日、性別が記載された「通知カード」で送られてきます。

 通知カードには、顔写真が含まれないので本人確認には使えません。しかし、2016年1月以降、これまでの住基カードに相当する「個人番号カード」の公布を受けられます。こちらには表面に写真が入るので本人確認の身分証明書にもなります。

 運転免許証を持っていないという人にとって身近な身分証明になりそうですね、と言いたいところなのですが……。

個人番号カード、コピーするのもされるのも注意!

 個人番号カードの表面には、氏名、住所、生年月日、性別、顔写真と、本人確認のための情報がそろっています。重要な点は、表面にはマイナンバーこと「個人番号」が記載されていないこと。個人番号は「裏面」に記載されています。

個人番号カード 個人番号カードの使い道(出典:内閣官房)

 この個人番号こそ、多くの企業がマイナンバー対応に苦しめられている元凶(?)。これを適切かつ安全に取り扱うため、さまざまな作業とルールが取り決められようとしています。

 「マイナンバー対策は企業だけがやればいいものでしょ?」と思っている人も多いでしょう。確かに今、話題になっているのはまさにその部分。そのため、個人がマイナンバーとどう付き合っていくべきか、という点はまだまだ情報が足りないように思えます。

 例えば、個人番号カードもそれらルールの例外ではありません。個人番号カードの“裏面”をコピーできるのは、行政機関や雇用主など「法令に規定されたものに限定」されています。それ以外の人はコピーのみならず書き写すことも禁止されています。特にこの点はもっともっと国民に知られるべき点だと思います。

身分証明として「個人番号カード」を使うリスク

 あり得そうなシナリオは、レンタル店や携帯電話契約における本人確認でしょう。これまで筆者が本人確認を求められた場合、運転免許証を提出し、そのコピーを取られることに同意してきました。すると当たり前のように運転免許証の両面がコピーされます。業務用スキャナなどには1度の読み取りで自動的に両面をスキャンする機能が備わっているものもあります。

 今後、個人番号カードを本人確認用に使う場合、裏面がコピーされないように注意しなくてはなりません。従業員やアルバイトスタッフ側にも裏面のコピーは厳禁であることを教育しなければなりません。当たり前のことですが「有名人の個人番号カードをゲットした!」などと、顔写真のない裏面をSNSに流すことも厳禁です(さすがにいないとは思いますが)。

個人番号カード 個人番号カードを身分証明書として使ってもいいですか?(出典:内閣官房)

 このようなことを考えると、個人番号カードを本人確認書類として「持ち歩く」ことはかなりのリスクなのではないかと思います。運転免許証を持っている人はこれまで通り運転免許証で、もし持っていない人も、なるべく個人番号カード以外のものを本人確認として使うのがいいのではないかと思います。

 もし個人番号カード以外に本人確認書類がなかったときは、認知が浸透するまでのしばらくの間、相手に「裏面はコピーしないでください」と一声かけるくらいがちょうどいいのでは、と思っています。

著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

デジタルの作法 『デジタルの作法』

元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。

筆者より:

2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。

これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。みなさんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。


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