マイナンバー2015

第3回 マイナンバー対応「税理士と企業の役割分担」のポイント税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(1/2 ページ)

マイナンバー制度は全ての企業、さらにその先、例えば税理士の業務にも関係する。特に中小企業は「税理士への委託を考慮した対策」が必要だ。今回は「税理士と企業の役割分担」のポイントを説明する。

» 2015年07月01日 07時00分 公開

講師:中尾健一(なかお・けんいち)氏

アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役。1982年日本デジタル研究所(JDL)入社。日本の会計事務所のコンピュータ化を30年以上に渡りソフトウェア企画面から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システムを企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。2015年4月に発足したクラウドマイナンバー事業における「マイナンバーエバンジェリスト」として、中小企業の財務を担う税理士の視点から、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。



中小企業と税理士事務所の役割分担・連携のポイント「従業員からのマイナンバー収集」

 マイナンバー対応において、企業は税理士とどう準備を進めていけばよいでしょう。

 まず年末調整業務で、中小企業の従業員およびその扶養親族の個人番号が必要となります。個人番号の取り扱いの最初のステップとなる従業員からの個人番号の収集について、中小企業と税理士事務所で打ち合せの上、どのような方法で行うのか、決めていきます。

 従業員からの個人番号の収集をいつから行うのかも決める必要があります。

 2015年の10月5日以降、個人番号が市区町村から住民票を有するすべての個人に送付されます。

 また、今年(2015年)の年末調整の際に、従業員が記入して事業者へ提出する「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(下図)から、従業員およびその扶養親族の個人番号を記入する欄が設けられます。


photo 図:「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」

 なお、年末調整で作成する源泉徴収票に個人番号を記載しなければならないのは、平成28年(2016年)分の給与所得からなので、個人番号を利用して源泉徴収票を作成するのは2016年(平成28年)末ということになります(*)。ですが、従業員の個人番号収集を先延ばしすればするほど従業員が通知カードを紛失してしまう可能性が高まり、スムーズに収集作業が進まなくなる恐れがあります。

 (*2016年1月1日以後に給与を支払った2016年1月以降の退職者には、個人番号を記載した源泉徴収票を退職時に作成する必要があります)

 年末調整を請け負う多くの税理士事務所では、個人番号の送付が行われる今年(2015年)の10月から収集をきちんと開始するために、中小企業へ事業者や従業員などの個人番号の提供を求める準備を進めています。

 そして、税理士事務所と中小企業の適切な役割分担を考慮して、事業者には以下のような役割を果たすことが求められてきます。

  • 社内で個人番号を取り扱う事務取扱担当者と責任者を明確にして、担当者または責任者が個人番号の収集にあたること
  • 個人番号の利用目的を従業員に明示、説明する(一度収集した個人番号を、当初従業員に伝えた利用目的以外に使用できません。利用目的は可能性のある範囲として、源泉徴収票の作成だけでなく、当然ですが社会保険関連の書類作成も入れておくことを勧めます)
  • 個人番号収集時に従業員の本人確認を行うこと

 ここでの本人確認とは、本人の「身元確認」(確かに本人であることの確認)と「番号確認」(提示された番号が本人の個人番号であることの確認─)をセットで行うことを示します。

photo 個人番号取得時の「本人確認」として、番号確認と身元確認を行います。なお、従業員などで雇用関係にあり人違いでないことが明らかならば、身元確認書類は必要ないとされています

 では、以上のような要件を満たしたうえで、中小企業がこの個人番号の収集を行うシーンで、具体的にどのような作業を行うことになるのでしょう。いくつかの方法が考えられますので羅列します。

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