スキャナで古い文献をデジタル化するなど、歴史的な価値のある文化財をデジタル化する動きが盛んだ。イタリア・フィレンツェでは美術館の絵画をデジタル化して後世に残そうとする動きもあり、その技術の一端を東京・九段下で体験できる。
ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』、レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』、パオロ・ウッチェッロの『サン・ロマーノの戦い』――。東京・九段下にあるイタリア文化会館で開催している「ウフィツィ ヴァーチャル ミュージアム2016」(2016年2月13日〜3月13日、入場無料)では、ルネサンス期の名画23作品が飾られている。
全長2メートルもあろうかという絵画が並んでいるが、実は全て“レプリカ”。絵画を撮影してデジタル化し、大判プリンタで印刷したものなのだ。
たががレプリカと思われる方もいるかもしれないが、実物を見ると本物と見紛うほどの迫力や立体感が感じられる。細部まで再現するために1200ppi(pixel per inch=1インチあたりのピクセル数)という高解像度の画像を作成している。最も高精細な『ヴィーナスの誕生』(縦172センチ×横278センチ)に至っては、約103億画素というから驚きだ。
この画素数を実現するために、2台のカメラを使い、絵画を1550分割で撮影したという。レンズ由来のゆがみや色調は画像処理で補正し、PC上でつなぎ合わせる。機材のセッティングなどに時間がかかることもあり、撮影には絵画1枚あたり1日〜2日かかるそうだ。撮影は基本的に休館日に行うため、作業を効率的に進めないと間に合わないという。
また、デジタルデータだからこそできる鑑賞方法もある。展示会では4Kのタッチディスプレイを設置しており、絵画をタッチ操作で自由に拡大、縮小しながら鑑賞できるほか、200インチの画面と130インチの4面の5面スクリーンを使ったデジタルシアターも用意している。
このウフィツィ美術館所蔵の絵画をデジタル化するプロジェクトは、フィレンツェ大学やイタリアの企業と日立製作所が共同で進めているものだ。2008年から始まり、2016年2月現在で29作品のデジタル化が完了しているという。こうしたデジタル化技術は絵画のレプリカ作成のほか、修復などにも役立てられるそうだ。
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