ホンダのF1復活への布石、データでIBMと組む理由とは?IBM InterConnect 2016 Report(1/2 ページ)

2015年にパワーサプライヤーとしてF1に復帰したホンダ。年々厳しくなるF1のルールに対応すべく、日本IBMとデータ分析システムを構築した。開幕が近づく2016年シーズンに向けた取り組みを聞く。

» 2016年02月23日 19時07分 公開
[國谷武史ITmedia]

 ホンダは、2015年にF1の有力チームで知られるMcLarenと協業し、パワーサプライヤーとしてF1に復帰した。復帰初年は厳しい結果となるレースも少なくなかったが、2016年シーズンは大きく変化するかもしれない。IBMが米国で開催中の「InterConnect 2016」において、パワーユニットの開発を手掛ける本田技術研究所とデータ解析システムを構築したことを発表。現地で本田技術研究所にその取り組みを聞いた。

ホンダのF1パワーユニットでのIBMの採用は米国でも大きく注目された

 このシステムは、F1マシンのパワーユニットに搭載された160以上のセンサから収集されるデータを蓄積、分析する基盤として本田技術研究所のHRD Sakura(栃木県さくら市)に2015年シーズンが始まる前に構築されたという。IBMの「IoT for Automotive」と呼ばれるソリューション群から、WebSphere Application ServerやIBM InfoSphere Streams、IBM Cognos Business Intelligenceなどの機能を採用している。HRD Sakuraはパワーユニット開発の最前線であると同時に、サーキットの現場を支えるバックエンドでもある。

 パワーユニット開発室 マネージャー 主任研究員の名田悟氏は、「近年のF1はコスト削減の観点からレギュレーションで現場に入ることのできる人員数が厳しく制限されており、パワーユニットに関しても最小限の人員しか入れません。現場業務のサポートとデータ解析の基盤として『ミッションコントロールルーム』という場所で運用をしています」と話す。

 現在のF1マシンのパワーユニットは、ガソリンのターボエンジンと電気モータを組み合わせたハイブリッドシステムとなる。かつてのように、ガソリンを燃焼してターボエンジンで走行するだけでなく、エンジンから廃棄される熱やガス、さらにはブレーキ作動時の高温の熱も使って発電し、その電気によってモータも動かす。異なる動力源を持つ複雑なパワーユニットには、最高時速300キロ以上の走行を可能にする高い出力性能と、300キロ近いレース距離を給油なしで走り切る低燃費性、そして、1基のユニットを幾つものレースで使用できる高い信頼性といった厳しい条件が求められる。

 パワーユニットはF1マシンの心臓部であるだけに、その開発はHRD Sakuraと英国にあるMcLarenのファクトリーや世界中のサーキットを結んで進められる。そしてレース中においては、パワーユニットをリアルタイムに監視してわずかな兆候へ瞬時に対応し、トラブルを未然に回避しないといけない。その作業も日本と英国とサーキットを結んでリアルタイムに行っている。

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