サーバ保守切れに悩む、神奈川大学の情シスが選んだ“抜け道”とは?

少子化で学生が減るなか、コストカットが求められる大学は多い。システムにかけるお金が少なくなる中で、ITインフラの“延命”を求めるケースは多いようだ。大学のIT支援を行う企業に、情シスを取り巻く環境の変化について聞いてみた。

» 2016年05月20日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 企業の情報システム部門にとって、ITインフラのコスト削減は頭の痛い課題だが、学校においてはさらにそれが深刻だ。少子化で生徒数が減ることが予想できるぶん、よりシビアな状況だと話すのは、学校法人への経営・IT支援事業を展開するエデュースの寺口慎也さんだ。

photo エデュース 事業推進本部 営業部 次長 寺口慎也さん

 「ここ最近では、中小規模の大学でサーバのクラウド化やハウジングなど、校内に資産を置きたくないという要望が増えてきています。セキュリティの高さが認知され、学外に情報を置くことに対して抵抗感が薄れてきたこともありますが、経営が厳しくなる中、インフラの維持、運用コストを減らしたいというニーズも強いようです」(寺口さん)

 同社は、主に大学に対して財務経理や人事給与のパッケージやクラウドサービスを販売しているが、サーバやOS、PCなども合わせて購入することが多いため、インフラの保守も行っている。情報システム部門が1人か2人、あるいは職員が兼務で行っているような学校では、クラウドが有力な選択肢になっているが、生徒数も多い大規模な大学では、状況がまた異なるそうだ。

サーバルームを持つ大規模大学の情シスが持つ悩みとは?

 「情報システム部門のスタッフが10人以上いるような大規模な学校では、しっかりと設備が整ったサーバルームを持ち、自前で管理を行っていることがほとんどです。UPS(無停電電源装置)など多額の投資をしたところほど、クラウド化よりも、現状の資産を生かすことを重視する傾向があります」(寺口さん)

 しかし、彼らもコスト削減に悩んでいるのは事実。ソフトとともにサーバも納入したクライアントの場合、メーカーの保守切れの時期が近づくと“どうにかして延命(保守延長)できないか”とよく相談されるという。一般的なサーバ製品の保守期限は5年間。買い換えのスパンを長くすればコストは削減できるが、万一の際にサポートを受けられないリスクがある。

 寺口さんもその都度、ベンダーの代理店などに相談するものの、話がなかなか通らず悩んでいたところ、神奈川大学の情報システム部門から、ベンダー以外の事業者がメーカーの保守切れとなったITインフラの保守延長を行う「第三者保守」という選択肢を教えてもらった。約2万人の学生を抱える同大学の法人システムは、7台のサーバで運用しているが、それぞれがバラバラのタイミングで保守期間が切れることに悩んでいたのだ。

photo 神奈川大学の情報システム部門もサーバの保守切れに悩んでいたという(写真提供:神奈川大学)

 「話を聞いた当初は半信半疑な面もあった」という寺口さんだったが、ベンダーがダメと言うならこれしかない。保守サービスを第三者保守大手の「データライブ」のものに切り替えたが、何とその矢先に、順調に稼働していたはずのサーバにHDD障害が起きてしまった。不安な寺口さんをよそに、データライブの担当者は、原因の特定からHDDの交換作業まで「一般的なベンダーの保守サービスと変わらない価格とクオリティ」(寺口さん)で行ったという。

 「ベンダーのスポット保守よりも安いところはいいですね。各ベンダーの部材が用意できるのか心配される情報システム部門の方は多いですが、保守専用の施設を見学した際に、かなりの量の保守部材を保管していると分かりました」(寺口さん)

 大学の情報システム部門がITインフラの導入を検討するのは秋ごろだという。次年度の予算が決まる時期であるとともに、学生が夏休みの時期にインフラを点検し、刷新を検討するケースが多いためだ。保守サービスも刷新し、さまざまな学校に提案する準備を整えているところだ。

 「扱っているのがお客さまの基幹システムなので、やりがいを感じる半面、責任の大きさは感じますね。パッケージシステムやITインフラの支援自体は、教育そのものへの支援ではありませんが、学校法人自体の運営を安定させることで、より良い教育の提供につながるものと考えています」(寺口さん)

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