B2Cの営業や販売担当者の仕事も、AIによって大きく変わる。本当の意味で“消費者1人1人のニーズ”に合わせて売ることができるようになるのだ。
米国のスポーツグッズ専門オンラインショップを運営するFanaticsは、ワントゥワンマーケティングを、AIを使って行っている。これまでFanaticsは、メールマガジンやSNSを活用して売り上げを上げていた。しかしどのユーザーにどの方法でアプローチすれば効果が出るのかは、分析しきれていなかった。
あまり広告を出し過ぎても、ユーザーは反応しなくなってしまうため逆効果。ユーザーごとに適切なチャンネルでピンポイントに伝えるには、どうすればいいのか……。
そこでAIが登場する。「Aさんはレッドソックスのファンで、朝に送ったメールマガジンをよく読んでいる」「Bさんはヤンキースのファンで、ランチタイムに表示したFacebook広告からの購入率が高い」――1人1人のデータを読み取り、ユーザーが欲しがるものを適切な手法でアピールできるようになる。
ユーザーの個々の分析が進めば、グッズごとの売り上げ予測も立てやすくなる。
「Fanaticsのグッズは、試合でどちらが勝ったかによって売り上げが変わる。AIを使うことで、勝敗によってどれだけ売り上げが変わるか、どれくらいグッズを仕入れておくべきかを予測できる。そして、メッツが勝った瞬間に、メッツファンにキャンペーンメールを送ることができる」(マーケティング&販売最高責任者クリス・オートン氏)
Salesforceは、アインシュタインを「世界で最も賢いCRM(顧客管理システム)として、Salesforceの製品を使うユーザーのデータサイエンティストになる」とアピールする。
アインシュタインは独立した製品ではなく、これまでの製品に組み込まれてツールのように使えるもの。データを取得し、アルゴリズムで自然言語処理や機械学習を行い、データの活用や将来予測の手助けをする。データが多ければ多いほどアインシュタインは“賢く”なり、より自社に即した分析をするようになる。
アインシュタインのアルゴリズムは、そこまで複雑なものではない。製品ごとに組み込まれているため、機能も限定的。IBMのWatsonやAppleのSiriではなく、むしろ“将棋に勝つためだけに作られた”ソフトPonanzaに近い。
Salesforceがたびたび強調しているのが「AIの民主化」だ。ビジネスユーザーがエンジニアやデータサイエンティストなしで使えるように、AIを簡素化しているという。
「営業は、実際に“売る仕事”以外に時間を取られている。スマートにアインシュタインを活用することで、営業は売る仕事に集中できる」(Salesforceエグゼクティブバイスプレジデントのアダム・ブリッツァー氏)
リードの絞り込み、メール送信、ユーザー分析、日報……営業がやらなければいけないことは多い。それをAIに任せることで、収益を生み出す仕事に注力できる。いつかは、単純な仕事はAI同士でやりとりするようになるかもしれない。AIは営業の仕事を、より効率がよく専門的なものに変えていく。
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