第1回で挙げたナイフの例に例えると、「このナイフは肉が切れますか?」とお客さんから聞かれて、「(果物向けだけど、肉が切れないわけじゃないし)えぇ切れますよ、おすすめはしませんが」といった感じでしょう。
これは極端な例ですが、ソフトウェアは無形なものであるためか、しばしばこういったやりとりを目にします。本来なら、買い手企業と売り手企業がそれぞれの背景を共有し、共通の利益となる領域を探す取り組みが必要なのです。
では、どうすればそのような共通の利益を探し、パッケージソフトウェアを適切に選べるのでしょうか。私のこれまでの経験からいくつかポイントを挙げていきます。
まずは検討しているパッケージソフトウェアを、「どんな機能を提供しているのか」という視点だけではなく、そのシステムに関わるさまざまな立場の視点に立って評価しましょう。
立場によって、ソフトウェアに求める要件は異なります。経営者であれば、そのソフトウェアを購入して(投資して)どのくらいのリターンが得られるかという点に注目するでしょうし、現場のユーザーならば、今より業務が楽になる機能が提供されるかが大切です。
このようにさまざまな視点の問いかけに、ソフトウェアが応えているかどうかが評価の指標となります。そのためには、社内のさまざまな立場の関係者が、ソフトウェアにどんな要件を求めているかを把握しておく必要があります。
達成すべきゴールをシンプルに、そして明確に提示しましょう。エンタープライズ向けのソフトウェアの場合、製品が提供する機能を使うこと自体が最終目標ではなく、「それを使って何を成し遂げたいのか」という、経営的な目標があるはずです。それはお金であったり、時間であったり、何かの件数といった数であったり、と必ず数値化できるものです。
パッケージソフトウェアの提案が、適材適所になっているか、見る目を養いましょう。前述の通り、世の中のあらゆる課題に対応できる万能なソフトウェアは存在しません。SIとは違い、パッケージソフトウェアは既製品なので、その得意分野を組み合わせた、複数のソフトウェアによるソリューション提案になるのが通常です。
本来であれば、メーカーから適切な提案をすべきですが、メーカーも価格競争に勝つため、提案する製品を少なくしたり、勝つためにいろいろな工夫をしてきます。それをチェックするための方法は案外簡単です。末端の機能にとらわれずに「そのソフトウェアがもたらす価値は何なのか」を繰り返し問いかけましょう。その製品のコンセプトや生まれた背景を知ることで、本当に自社の課題に沿うソフトウェアなのかを判断しやすくなります。
これらのポイントは少々概念的であり、具体的な行動に移すには、分かりにくい点もあるかもしれません。それについては今後の連載で、さらに詳しく説明していきます。次回は、第1回で触れた「SIとパッケージソフトウェアを混同」したために起こる失敗例と、回避するためのポイントをご紹介したいと思います。お楽しみに。
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