あるソフトウェアを“有償で”提供している場合、その企業は、そのソフトウェア単体でビジネスが成立する戦略を取っているということです。
売り物なので、当然それ単体で買い手に効果をもたらすものでなければなりません。その場合、ソフトウェアのライセンス費用もさることながら、導入を成功させるための構築サービスも有償で提供するのが一般的です。
製品を購入してもらう目的は「ソフトウェアが役割と責任を果たし、ユーザーに最大限の価値をもたらすこと」なので、ベンダーはそれを実現するためのサービスと体制を用意し、ユーザーもその支援を受けることで目標達成を目指す、という枠組みになります。
一方、ソフトウェアを“無償で”提供している場合、その企業は、それ以外の部分で収益を得る戦略ということになります。無償のソフトウェアが、バンドルされているハードウェアや、別のソフトウェアを販売するための魅力的な「付属品」というわけです。
その企業としては、バンドル元のハードウェアやソフトウェアを売ることが目的ですから、そちらが売れるならば、付属品の利用を促進する必要はありません(「無料ですよ」という言葉も出てこないでしょう)。
買い手側が付属品に期待したのではなく、バンドル元の機能で購入を決めたのであれば、両者に期待値のズレは生じにくいですが、もしも付属品が決め手になり、その活用にも重点が置かれているような場合、ベンダーにそのつもりはない(導入費用も提示していない)ので、その活用に四苦八苦するハメになるのです。
以前の記事でも紹介した通り、特に外資系企業の場合は、営業のインセンティブもあるため、無償の(インセンティブのない)製品を売り込むという非合理的なことはしないでしょう。中には、無償製品の活用を進めることで、本丸のハードウェアやソフトウェアの販売につなげようと考える人もいるかもしれませんが、無償の製品に対して、十分なサポート体制が提供されるとは考えにくく、計画倒れに終わる可能性が高いと思います。
では、そうならないために、IT部門はどう見極めればいいのでしょうか。
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