議論を呼ぶ「訂正できる」ブロックチェーン、そのメカニズムとは?金融機関で検証進む(1/4 ページ)

アクセンチュアが開発を発表した「訂正できる」ブロックチェーン技術がビットコインのコミュニティーで議論を呼んでいる。同社では、閉じたパーミッション型ブロックチェーンの使い勝手を向上させるとともに、法制度への対応も果たすなど、金融機関らが活用する際のハードルを下げる技術だとしている。

» 2016年12月07日 08時00分 公開
[星暁雄ITmedia]

 コンサルティングと情報システム開発を手掛けるグローバル企業のアクセンチュアは、「訂正可能なブロックチェーン技術」のプロトタイプを開発し、同社の一部顧客と共に実システムでの検証を進めている。ブロックチェーンは、仮想通貨に起源を持つ技術として知られているが、その特徴を生かして金融機関などで活用に向けた実証実験が進んでいる。

 今回、アクセンチュアが開発した技術は、ブロックチェーンを知る人からは疑問の声も挙がっている。そこでまず、取材で分かった重要な前提を2点お伝えしたい。

 この技術は、(1)企業間の閉じた環境下で、よく管理されたパーミッション型ブロックチェーンに特化している。(2)“訂正”というのは例外的な措置であり、ブロックチェーンの価値が「信用できる記録」にある点は従来と変わらない。今回の技術を開発した背景にあるのは、「企業情報システムでは、情報の訂正が必要な場合がある」ということだ。アクセンチュアはこれを顧客へのヒアリングで知った。

photo ブロックチェーンの概要(出典:ITソリューション塾)

 技術的には、従来のブロックチェーンで使われていたブロックを結び付ける「ハッシュチェーン」と並行して、新たに「カメレオンハッシュ」と呼ぶ別の技術を追加して訂正可能なブロックチェーンを実現した。ブロックを結び付けた後に管理者による「鍵の開け閉め」を可能とする暗号学的なメカニズムである。共同開発者である米スティーブンス工科大学のジュゼッペ・アテニエセ博士と共に、米国とEUに特許を出願中としている。

 「訂正可能なブロックチェーン」の発表はブロックチェーンに関心をもつ人々の間で大いに議論を呼んだ。そもそもブロックチェーンは、“改ざん不可能”という点が高く評価されていたからだ。

 これについて同社は「現実世界の法的規制などに対処するためのものだ。市場の反応はポジティブだが、ビットコインのコミュニティーで議論を呼び起こしていることは承知している」(アクセンチュア金融サービス本部 グループ・チーフ・エグゼクティブ リチャード・ラム氏)と話している。

Hyperledgerに組み込み、一部顧客と検証を実施中

 訂正可能なブロックチェーンは現在、顧客企業と共にPoC(Proof of Concept:概念実証)に取り組んでいる段階で、Linux Foundationが推進するHyperledgerに組み込む形で実現している。将来的にどのような形でこの機能を公開するか、またオープンソースにするか否かは「検討中」だという。

 HyperledgerとはLinux Foundationのプロジェクト名だが、IBMがコードを寄付(コントリビュート)したパーミッション型ブロックチェーン技術、Hyperledger fabricを取り巻く動きが活発である。アクセンチュアはHyperledgerのプレミアメンバーで、他には日立製作所、富士通、IBM、Intelなどの企業が名を連ねる。

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