欧州最大級のデータセンター「TELEHOUSE London Docklands」の新棟を見てきた(1/2 ページ)

全世界にキャリアニュートラルのデータセンターを要するTELEHOUSEが、11月末にロンドンに大規模なデータセンターをオープンした。最新の技術を取り入れた巨大なデータセンターを見てきた。

» 2016年12月12日 09時00分 公開
[石川温ITmedia]

 KDDIの欧州法人で、データセンター事業を手がけるTELEHOUSE Europeが11月21日、英国ロンドンのドックランドに、新たにデータセンター「TELEHOUSE London Docklands North Two」(ノース2)を開設した。欧州最大級のデータセンター「TELEHOUSE London Docklands」には、キャンパス内にすでに3棟のデータセンターがあったが、今回、新たに4棟目を建設。12月1日には、メディア向けの完成披露イベントが開催された。

TELEHOUSE London Docklands 今回、4棟目の建物としてオープンしたTELEHOUSE London Docklands North Twoの外観。回路図のような壁の中に空冷設備がある
TELEHOUSE London Docklands イベントでは、特製のマスで、現地駐在員が厳選した日本酒が振る舞われた

英国インターネットの中心、London Docklands

 もともと、TELEHOUSEは1989年に米国東海岸のニューヨーク、1990年にロンドンで事業を開始するなど、30年以上の実績を誇っている。現在では世界13地域24都市48拠点でデータセンターを展開している大手だ。総床面積は44.7万平方メートルで、東京ドーム9つ分にもなるという。顧客数は約2000社を超え、売上高のシェアは世界第5位となっている(Synergy Reseach Group調べ)。

 TELEHOUSEの特長は「キャリアニュートラルのデータセンター」であるという点だ。通常、多くの通信事業者は自分たちで設備を持ち、運用をしていて、その余剰分でデータセンター事業を手がけるといったことが行われていた。

 しかしTELEHOUSEは、現地でキャリアビジネスを展開しているわけではなく、データセンター専用の事業者としてスタートし、どんな事業者、回線でも受け入れる体制であった。こうしたビジネスモデルは、世界初だったという。

 インターネットが普及してくると、ISP(インターネットサービスプロバイダー)などが次々と現れた。その際、どこかに接続設備を置かなくてはならないが、他のキャリアが運営しているデータセンターでは競合になってしまう。そのため、キャリアニュートラルで展開しているTELEHOUSEにISPが集まるようになってきた。

 ロンドンインターネットエクスチェンジ(LINX。ISPやデータセンターの相互接続ポイント)にもなっているということで、現在、ドックランドのデータセンター全体では、合計530社以上とのダイレクト接続を実現し、ロンドンのインターネットトラフィックの70%をカバーするまでに成長しているという。

 通常、インターネット向けにサービスを提供する企業が自前でデータセンターを建設する場合、気温が比較的低い、郊外の広い土地を確保する場合が多い。そのほうが空調設備が不要でコストが安くなるからだ。

 ちなみにデータセンターというと、すでにサーバが用意されており、ラック売りでそこに自前のデータを置くというイメージもあるが、TELEHOUSEでは、そうした対応も行うものの、データセンター内の場所と電源を提供し、サーバなどの設備は自前で準備してもらうというホールセールがビジネスの中心だという。

TELEHOUSE London Docklands サーバなどが入っていないフロアの様子。建物は11階建て、総床面積は2万4000平方メートルにもなる

間接外気空調システムを採用

 TELEHOUSEの場合、キャリアニュートラルで、さまざまなISPや通信事業者、コンテンツメディア事業者、クラウド事業者などをつなぐ必要がある。とにかく、都心に近く、ユーザーに対してのレスポンスが良いことが重要であり、また「他社とにつながる」という接続性が求められることになる。そのため、郊外ではなく、都市型のデータセンターになっているのだ。実際、TELEHOUSE London Docklandsは、ロンドンの中心地から10キロほどの距離にあり、金融街からも近い。

 TELEHOUSE Europeの曽雌博之社長は「どこでつながるのが最も効率がいいか。とにかくレイテンシーが重要と言える。レイテンシーがビジネスにおける競争力の差になっていく」と話す。

TELEHOUSE Europe 曽雌博之社長 記者向けイベントであいさつをするTELEHOUSE Europeの曽雌博之社長

 今回新設されたノース2では、都市型データセンターとして初めて「間接外気空調システム」が導入されている。

 データセンター内部の空気を循環させ、サーバから放出された熱によって温められた空気を壁際まで移動させ、比較的温度の低い外気と間接的に触れさせることで温度を下げ、再び、データセンター内に戻し、室内の空気を冷やしているという。このとき、もちろん、外気とデータセンターの内部の空気が交わり、外気が中に侵入するということはない。あくまでも温かい空気は、ダクトを通じて、外気の冷たい空気で冷やされるということになる。データセンター事業者としては最高レベルのエネルギー効率となる「PUE1.16」を実現する。

TELEHOUSE London Docklands 空気が循環されており、ラックに収まっているサーバーが冷やされる
TELEHOUSE London Docklands サーバの内側が背中合わせに並んでいる状態。サーバの外側から冷やされた空気が内側に向かって流れ、内側に集められた温かい空気が、天井から外に抜けていく

 電源は、2010年に変電施設をキャンパス内に設置。TELEHOUSE専用として稼働しており、将来に向けて50MW(メガワット)を確保しているという。

 またデータセンター内部には、万が一の時に備えて、15分間稼働を続けられるバッテリーも設置。さらに発電所も設けられており、外部からの電源供給が止まった場合にも、数分以内に発電を開始する。TELEHOUSEの施設は、ロンドンのさまざまな公共施設の中でも、国が認める重要な位置付けとなっており、よほどのことがない限り、電源供給が止まるということはない。

TELEHOUSE London Docklands 1階に設置されたドイツ製の発電機。現在は4基設置されているが、将来的には8基まで増設される
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