POSデータを公開、売り場づくりはメーカーとともに――異端の販売戦略を支えるデータ分析のチカラ(1/3 ページ)

データ活用を通して顧客満足度と売り上げを高めようと、さまざまな施策を行う小売業界の「トライアル」。POSデータを公開し、メーカーと店舗が同じデータを基に議論する体制を整えることが、さまざまな価値の源泉にあるようだ。

» 2017年04月26日 08時00分 公開
[寺澤慎祐ITmedia]

 電子レシートやタブレット内蔵ショッピングカートなど、先進的なIT活用で知られる小売業界の「トライアル」。そのトライアルホールディングス グループCIOの西川晋二氏が、日本データマネジメント・コンソーシアムが主催するユーザー会で講演を行った。

 「会員データはどう集めているのか?」「POSデータを公開するデメリットはないのか?」「外部企業とどう協力している?」――講演後には西川氏への質問の時間が設けられ、熱い議論が交わされた。本記事ではその議論の様子をお届けしよう。

photo 西川氏の講演および意見交換は、アイティメディアのセミナールームで行われた。意見交換のファシリテーションは寺澤が行っている

リアル店舗は、会員のデータをどう集めればいい?

参加者A: 既存店の売り上げはITによって、どう向上しているのでしょう。

西川氏: 既存店の収益性もそうですが、それ以上にどこに新しい店舗を作るのかが重要です。当社では、WebGIS(地理情報システム)を使って出店の最適地を探していますが、WebGISに国勢調査のデータ、消費データ、交通量データを重ね合わせて最適な出店地を導いています。今後はモバイル空間統計なども使っていきたいですね。

寺澤: 商圏ごとに世帯構成や世帯年収が違うと思うのですが、商圏単位で配布するチラシの種類を変えているんですか?

西川氏: トライアルの店舗は郊外が多く、世帯年収が顕著に影響するのか定かではありませんが、チラシの配布はこれからの課題です。どこに打つべきか、どのようなチラシにすべきなのかを最適化したいと思っています。とはいえ、リアルの施策であるチラシはどんどん減らしていく方向で考えています。データを活用して、もっとデジタルな世界でのプロモーションに注力したいです。

photo トライアルではWebGISを使い、出店戦略を練っているという

参加者B: トライアルが今後、Amazon.co.jpなどと戦わなければならないとすると、顧客の属性データや会員の属性データはどのように収集したり、活用したりしているのでしょう。

西川氏: 会員になるときに氏名、住所、生年月日、電話番号、メールアドレスを記入していただいていますが、どうしても全ての項目は入れてもらえない。当社のお客さまの75%以上は会員になっているので、さまざまなデータ分析をする上で、統計上有意な分析ができるだけの属性情報は得られているとは思っています。

 Amazonとの競争という意味では、属性情報をつぶさに知ることが重要だと思っています。一例ですが、電子マネーを使いたい人は結構多く、電子マネーを使うために、より多くの情報を入れてもらうようお願いすると、大部分の人が情報を入れてくれます。電子マネーを採用している店舗は今のところ2店舗ですが、50%以上の方が電子マネーを使っています。

参加者B: 電子マネーで登録してもらうために、何かインセンティブなどを付けているのですか?

西川氏: 電子マネーを使う会員だけにポイントを付けるという施策などを行っていますが、基本的には、「小銭を出す面倒を省く」という良さを分かってもらいたいというメッセージを出しています。最近は高齢の方もなじんできたようで、利用者が多くなってきました。

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