答えられなかった質問はスタッフに確認――自ら“成長”する音声対話AI 日立が開発

日立製作所(日立)は、答えられなかった質問を職員に確認して自発的に“成長”する「音声対話AI技術」を開発した。

» 2017年09月29日 12時45分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 日立製作所(日立)は9月28日、ヒューマノイドロボット「EMIEW3」による接客、案内サービスでの活用を想定し、対応できなかった質問を職員に確認して自発的に日々“成長”する「音声対話AI技術」を開発したと発表した。

 日立は、これまでEMIEW3による接客、案内サービスなどの実証実験を行ってきたが、質問の言い方やニュアンスといった部分は、人により多岐にわたるため、意図を正しく理解できず、答えられない場合もあった。従来、このような課題には、システム管理者が継続的にログ分析を行い、答えられなかった質問に対して、対話コンテンツを定期的に拡充するという対応をしていた。

 今回開発した技術は、対話コンテンツ拡充の効率化を目的に、EMIEW3が自発的に、答えられなかった質問を見つけ、原因を明らかにし、不明点を職員に確認することで、自発的に学習する仕組みだ。システム管理者によるログ分析が不要になるうえ、業務知識を持つ職員がEMIEW3の質問に回答するだけで対話コンテンツを拡充できるようになり、工数を約10分の1に削減できることを確認したという。

 また、同技術を利用することで、EMIEW3は、変化の激しい製品や施設に関する情報をより早く学習でき、質問者の意図をより正確に理解して回答できるようになるという。

Photo 自発的に成長する音声対話AI技術による、成長の過程イメージ

学習速度を高める2つの技術

 この新技術は、「自発的に学習する技術」と「学習した『言い方』を効率良く活用する技術」により実現されている。

 機械学習を用いて不明点を特定し、自発的に学習する技術では、答えられなかった原因を分析して、答えが登録されていなかった場合と、言い方の違いにより意図を正しく理解できなかった場合の2パターンに分類する。

 答えが登録されていなかった場合は、EMIEW3は職員に答えを聞く。言い方の違いで答えが特定できなかった場合は、質問応答データベースに登録されている類似質問を検索し、その類似質問と同じ意図の質問であるかを職員に確認。職員の回答から学習した新たな答えや言い方は、質問応答データベースに自動的に登録する。

 学習した言い方を効率良く活用する技術では、テキストを形態素(意味を持つ最小の単位)に分割して、品詞を判別する形態素解析や、形態素間の関係(修飾関係や主語述語関係)を同定する構文解析などの自然言語処理技術を活用。

 この形態素解析と差分検出により、質問の意味が同じ2つの言い方から置き換えが可能な部分を見つけ出し、言い方の違い(言い換え)の規則を学習する。さらに、構文解析と機械学習を活用することで、間違った言い換えを覚えていないかもチェックし、より正確な言い換えの規則を生成。これを他の質問にも適用することで、言い方のバリエーションを増やすという。

Photo 自発的に成長する音声対話AI技術の概要

 日立は今後、「Haneda Robotics Lab」と共同で、羽田空港における同技術を搭載したEMIEW3の実証実験を予定している。

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