なぜ、日本のIT部門は業務の「見える化」ができないのか?夢物語で終わらせない「DevOps」(2)(3/3 ページ)

» 2017年11月01日 08時00分 公開
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 もともと機能別組織というのは、業務における急激な変化が少なく、市場や顧客への迅速な対応よりも、組織内部の効率化や生産性を高めることが、成功要因となる企業に適した組織体制です。そのため、バリューストリーム上の各プロセスが部署単位に分かれていると、担当者1人が管理できる範囲を越えてしまい、指摘しづらいプロセスが出てきてしまいます。

 また、社内だけでなく長年慣れ親しんだパートナーに、プロセスをまるまる外注していると、作業がブラックボックス化しているにもかかわらず、変更しにくいという価値観が生まれやすいのも事実です。変える意志はゼロではないけれど、どこか“他人ごと”になってしまう――。そんな担当者、あなたのまわりにはいませんか?

 その一方で、バリューストリームをうまく開発サイクルに取り組めている組織は、「運用をプラットフォーム化した事業部別組織」を展開し始めています。

 事業部別組織とは、その名の通り、独立してビジネスを行う「事業部」ごとに人員を分けた組織を指し、業務プロセスの最初から最後までを、単独の事業部に一貫して担当させることで、意思決定権限を事業部ごとに委譲し、迅速なサービスを展開できるようになります。

 一方で運用に関してはプラットフォームを一元化し、事業部内に運用プラットフォーム部隊との調整役を立て、ガバナンスを効かせるのが望ましいでしょう。その結果、部署単位での調整コストが減り、短期的な意思決定から、中長期の計画立案までのサイクルを事業部内で迅速に回すことができるようになるのです。

photo 職能別組織と運用がプラットフォーム化された事業部別組織

 各個人のKPIやバリューストリームの改善というのは、単に自動化やプロセスの見直しだけにとどまりません。組織内部におけるコミュニケーションを変える必要もあります。

 あなたの会社では、部署間で見えないカベができていないでしょうか? 無意識のうちにカベを作ってしまっていませんか? DevOpsに取り組む第一歩としても、部署間のコミュニケーションが円滑になるよう個人で努力することは大切ですし、強制的な組織構造の改革を検討することも、エンタープライズ系の企業には、今まさに求められているといえるでしょう。

著者紹介:北山晋吾

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 楽天株式会社にて国際ECサービスのインフラ部門に入社。主にオープンソースを利用したインフラ基盤やプライベートクラウドの設計、構築、運用を担当。

 その後、日本ヒューレット・パッカードにて、金融系システムのプロジェクトリードを経験。仕事に従事しながらグロービス経営大学院でMBAを取得し、現在はテクニカルアーキテクトとしてDevOpsやクラウド、Deep Learning分野をはじめとした、オープンソースソリューションの提案、コンサルティングおよび構築デリバリーを担当している。

 また、これまでの業務経験を生かし、教育トレーニングの講師やオープンソース勉強会のリード、アーキテクト育成活動など幅広く活躍している。

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