カードの不正利用もAIで暴く――JCBのデータ活用、その裏で活躍する分析チームの姿システムと組織の両面で改革(1/3 ページ)

国産クレジットカードの草分け的存在であるJCB。最近では、カードの不正利用検知にAIを利用するなど、データ活用を進めている。膨大なデータを保有するクレジットカードをビジネスに役立てるため、システムと組織の両面で改革を進めているのだという。

» 2017年11月13日 08時00分 公開
[冨永裕子ITmedia]

 現金以外の決済手段として、身近な「クレジットカード」。普段なにげなく利用する裏で、購買履歴や会員属性といった膨大なデータがたまっている。各カード会社は、そのデータをどうビジネスに生かすか、さまざまな工夫を行っている。

 クレジットカード大手のジェーシービー(JCB)も、そんな企業の1つだ。同社は米アナハイムで行われた「Teradata PARTNERS Conference」で、その組織的なデータ分析の取り組みを語った。

photo ジェーシービーは、日本のクレジットカードの草分け的存在ともいえる企業だ

全社データ基盤の「J-MARK」と分析専任チームの「JUST」

photo ジェーシービー システム本部 業務システム開発部 部長 箕谷宏史氏

 JCBでは、約4000人の社員全員がデータにアクセスできるよう全社のデータ分析基盤を構築している。それが「J-MARK(JCB Marketing System)」だ。膨大な量のカード会員の属性データや取引データなどをTeradataのデータウェアハウスを使って集約しているという。

 ユーザー部門からの認知度も高く、各社員はJ-MARKを通じて、さまざまなデータの抽出と分析処理を行っている。同社システム本部の箕谷氏によれば、「分析のためのアプリケーションも提供している」とのことだ。

 同氏が部長を務める業務システム開発部は、基幹システムを除く約60の業務システムの運用を担当している。日々のレポーティングでは、600テーブル、数万項目に上るデータにアクセスし、加工して使う。与信と販売促進については、SASで統計モデルを作るが、これもJ-MARKを基盤としてSASを活用する形なのだという。

 しかし、扱うデータの種類や量が増えるほど、複雑なデータ構造を理解するのが難しくなる。ユーザーが部門ごとに、その都度分析の仕組みを作るのでは、手間もコストも増えるという課題があった。

 特に、JCBでは3年ごとに定期人事異動があるため、担当者が別部署に異動し、ナレッジが分散するという悩みも抱えていた。新部署に赴任してから、前任者の分析結果を見ても、すぐには理解できない。そのため、統計知識とプログラミングスキルという、専門知識を必要とする統計モデリングの担当者は、社外で雇わざるを得ない状況だったという。

 そこで同社では、ユーザー部門の分析を支援しながら、ナレッジを集約してためるチーム「JUST(J-MARK User Satisfaction Team)」を立ち上げた。Support(支援)ではなく、Satisfaction(支援)をチーム名に入れたのは、彼らが、データ分析を通じて、ユーザーの満足度を高めることをミッションとしているためだ。

 箕谷氏によれば、JUSTは「レポーティングとオペレーション活動の改善と支援」「分析プロジェクト支援」「ユーザーヘルプデスク」という3つの業務を担うという。

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