“会社を揺るがす大事件”で火が付いた セゾン情報システムズの「働き方改革」(1/3 ページ)

旧態依然とした働き方が“痛みを伴う大きな事件”につながってしまった――。二度と同じ過ちを冒すまいと誓ったセゾン情報システムズの働き方は、どう変わったのか。

» 2018年01月18日 11時30分 公開

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 開発遅延で150億円の賠償金支払いへ――。セゾン情報システムズが、こう発表したのは2016年3月28日のことだった。

 大型案件の開発が遅れ、損害賠償を求められる争いに発展。交渉は長期化し、2016年に和解が成立したものの、発注元の2社に対して150億円という莫大な損害賠償金を支払うとともに、50人の希望退職を募る事態となった。

 それから1年8カ月――。この“大きな痛み”は、同社が働き方を見直すきっかけになった。全社的に業務プロセスを見直し、利用するITツールを刷新するBPR(Business Process Re-engineering)プロジェクトを通じて働き方が大きく変わったのだ。

 同社のこれまでの働き方はどこに問題があったのか、それをどのような形で改善したのか――。よりよい働き方を目指して移転したばかりの新オフィスで、人事部マネージャーの武田俊介氏と同チーフHRプランナーの北園康太氏、情報システム部 部長の高橋秀治氏、情報システム部スタッフの片平啓太氏に聞いた。

Photo 人事部マネージャーの武田俊介氏、情報システム部 部長の高橋秀治氏、チーフHRプランナーの北園康太氏、情報システム部の片平啓太氏

“痛みからの学び”が生んだ改革プロジェクト

Photo 情報システム部 部長の高橋秀治氏

 「以前の働き方を振り返ると無駄な作業が多く、本来やるべき仕事に割くリソースが不足していました」――。高橋氏は、以前の働き方をこう振り返る。例えば、2週間に一度開かれる経営会議に提出する資料は、Microsoft Excelを使って手作業で作成。ある資料を説明するために別の資料を作成するような“仕事のための仕事”に忙殺されていたという。

 「このやり方では無駄な手間がかかるだけでなく、情報もどんどん古くなってしまいます。その上、肝心の資料は内容が伝わりづらく、手作業が多いために細かい数字が誤っている可能性もありました。経営者も理解に手間取り、経営判断に支障が生じていたのです」(高橋氏)

 当時は、こうした点も含めて経営に必要な情報が見えにくい状況にあったという。

 これを契機に、経営層も早急に会社全体の見直しが必要であることを強く意識するようになり、まずは経営層に正しい情報と正しい数字をスピーディーに届けるにはどうすればいいかという検討が始まった。

 そこで情報システム部門が注目したのが、自社で開発しているデータ連携ソリューションのHULFT(ハルフト)やDataSpider(データスパイダー)だった。「これを使えば基幹系システムを連携させて、セルフサービスBIを使うことができるはず」(高橋氏)と考え、導入に向けた準備を開始したのだ。

 課題は、受発注データを業務システムから抽出し、加工して資料を作るのに手間と時間がかかっていたことだった。現場は2週間に一度のサイクルで発生するこの作業に毎月80時間もかけていたという。

 この作業は、データ連携ツールを活用し、システムとシステムを連携させてセルフサービスBIへとデータを流す仕組みを構築することで、全く手を加えることなく数字を見られるようになった。毎月80時間かかっていた作業が、新たな仕組みではゼロになったのだ。

 「このセルフサービスBIの導入がプロジェクトの最初の成果でした。これまではウォーターフォール型の開発が多かったのですが、このケースではアジャイルで開発し、スタートから2週間後にプロトタイプを提示できました。そのスピードには周囲の人たちも驚いていましたね」(高橋氏)

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