新中計のさらに詳しい内容については発表資料をご覧いただくとして、ここで成長の実現における国内事業のビジネスモデルの変革について、もう少し掘り下げておきたい。新野氏は国内事業について次のように説明した。
「これまで当社のビジネスは個別SIが中心だったが、このビジネスモデルでは収益性において限界がある。今後は需要の変化やエネルギーの効率利用などAIやIoTを活用した、これまでにないICTの適用領域が拡大していくと考えている。当社はこれらの動きを機会と捉えてお客さまとともに新しい領域を開拓し、それをサービス型で提供していきたい。その実現のためにサービスの共通業務プラットフォームの整備や人材の育成、お客さまとの共創プログラムを整備し強化していきたい」
図3が新野氏の発言のポイントを図示したものである。要は、NECのAIやIoTの技術基盤を活用した共通業務プラットフォームを整備し、それを基にサービス型ビジネスを展開することを表したものだ。
図3のサービス型ビジネスの展開のところには、デジタルトランスフォーメーション(DX)専任部隊の増強についても記されている。これについては、2017年11月13日掲載の本コラム「デジタルトランスフォーメーションとは何か NECの製品体系が示す、その正体」を参照いただきたい。このDXの製品体系も共通業務プラットフォームを支えている形だ。
筆者はこのサービス型ビジネスの展開が、NECの成長軌道への回帰のカギを握ると見る。ただ、サービス型ビジネスというと、顧客を呼び込むプラットフォームビジネスのような印象が強いが、それとともに従来のSI事業の長所である「顧客の良き相談相手となる」ところも大きなカギになるのではないか。
というのは、NECの国内事業における最大の強みは、グループ会社も含めて多くの顧客とダイレクトにつながっていることだと考えるからだ。顧客から相談相手として信頼されているIT企業は、どんなテクノロジーベンダーやプラットフォーマーよりも強い。なぜならば、顧客に信頼されていれば、テクノロジーやプラットフォームの選択についても相談される立場にいるからだ。NECは改めてそうした存在であることを再認識し、その立場を不動のものにするべく、自らを磨き上げていくべきだと筆者は考える。
そのためには、営業マンを単なるご用聞きではなく、ビジネスコンサルタントまでは行かなくとも、ビジネスアドバイザーとして育成する必要がある。問題はITの話ではない。そうすれば、営業マンのモチベーションも上がるはずだ。
NECに限らず、日本のIT企業にとってはかねて取り組んできたことかもしれないが、市場が大きく変化しつつある今だからこそ、ますます重要な取り組みだと考えるが、いかがだろうか。
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