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» 2018年06月11日 08時00分 公開

約7億円の導入効果:「ダウンしない火力発電所」をクラウドで実現 AWS導入で東京電力が超えた「壁」とは (1/2)

火力発電や燃料事業を手掛ける東京電力フュエル&パワーは、AWSを使って国内外の発電所の稼働状態をリアルタイムで監視する「遠隔監視システム」を立ち上げ、データ分析を使った故障予測や性能管理を実現している。

[高木理紗,ITmedia]

 東京電力フュエル&パワー(TEPCO FP)は、東京電力ホールディングス傘下で2015年に設立して以来、火力発電や燃料事業を手掛ける。同社は、国内外で火力発電所を運営する他、外部の事業者に発電設備の運用管理(O&M)サービスや、発電所運営に向けた人材育成サービス、コンサルティングサービスなどを提供している。

 同社は2017年1月、AWSで立ち上げた遠隔監視システムを使って国内の火力発電所の運転状態をリアルタイムで可視化し、故障予測や発電の効率管理などを行う「リモート監視センター(DAC:Data monitoring and Analyzing Center)」の試験運用を開始。2018年2月からは、「遠隔監視サービス」として、外部の事業者向けサービスの提供を開始した。これまでに、突発的なトラブルで発電所が停止する日数が減り、無駄な燃料費を削減するなどの効果を上げているという。

photo TEPCO FPの「リモート監視センター(DAC)」の仕組み

 同社で遠隔監視システム立ち上げプロジェクトに関わった技術サービス部の亀井宏映氏とOMビジネス部営業統括グループマネジャーの鎌田嘉文氏は、「AWS Summit Tokyo 2018」で講演し、プロジェクトが始まった背景や経緯について語った。

3.11以降に「完璧な発電所管理の実現」を背負ったTEPCO FPの課題

 国内外に多数の火力発電所を抱える同社では、運営コストの削減や発電効率の管理を課題として追求してきた。また、東日本大震災以降に設立されたことから、「発電所をどうやって完璧に管理し、ダウンタイムを防ぐか」も重要な目標だったという。

 ただし、従来はプラントで発生する故障などの予兆検知機能がなく、膨大な数のパラメーターをオペレーターが監視していた。そのため、異常を発見できないケースがあり、故障が原因でプラント全体を10日間以上にわたって止めなければならないようなトラブルが、年間70件ほど発生していたという。

 「過去の運転データや故障発生時は社内のサーバで保管していたので、こうしたデータを分析し、事故の予兆をリアルタイムで検知できる仕組みを作りたかった」(亀井氏)

photo TEPCO FPで技術サービス部電源設備技術ユニットの制御・IoT技術を担当する亀井宏映氏

 そこで同社では、予兆検知のソフトウェアを検討すると同時に、全プラントを制御し、かつデータを収集、分析する基盤として、クラウド導入へ舵を切った。従来はオンプレミスのサーバでデータの管理やシステムの構築を行っていたが、そうした作業にかかるコストや時間などの負担に加え、装置が故障した場合のリスクが大きかったためだ。また、遠隔監視システムの対象に新たな発電所を加える際など、状況に合わせて柔軟にリソースを調整できる点や、固定資産償却期間に合わせて膨大なデータを別のサーバに移管する必要がなくなる点も、同社のニーズに合ったという。

 「柔軟かつスピーディーなシステム構築を目指していた。顧客からの急な要求や契約停止などに対応したい場面もあれば、国外のソフトウェアベンダーから製品を導入した際、契約前に言われていたスペックと実際のものが異なっていて、インスタンスを調整しなければならないような場面もあった。オンプレミス環境では、システム検証1つにも時間がかかってしまう。ダウンタイムが許されない発電所の稼働を支えるには、AWSのように、1つのインスタンスが壊れたら自動的に別のインスタンスが立ち上がるような可用性や柔軟性が必要だった」(亀井氏)

 顧客企業のデータや発電プラントのデータをクラウドで管理したい同社にとって、製品選定のカギはセキュリティだった。「AWSの場合、豊富なセキュリティサービスの中から必要なものを選べば、2〜3週間程度でそれらが全てそろう点が良かった」と、亀井氏は話す。また、海外の発電所をリアルタイムで監視したい同社にとっては、全世界に展開するAWSのリージョンを使える点も、導入の決め手になったという。

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