ストレージクラスメモリを生かす効果的な使い道SCMの時代がやって来た(後編)

ストレージクラスメモリは高速かつ不揮発性という特徴があるが、まだ高価で容量は少ない。どのような使い方がベストなのか。ストレージクラスメモリの特性とサプライヤーの製品戦略を見てみよう。

» 2018年07月04日 10時00分 公開
[Chris EvansComputer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 6月20日号掲載)では、3種類(Z-NAND、3D XPoint、MRAM)のストレージクラスメモリ(SCM)について解説した。

 後編では、SCMをシステムにどのように適用するのか、どのような効果が得られるのかを解説し、SCMサプライヤーとその製品を紹介する。

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SCMの適用

 メディアの選択肢が増えたことで、ユーザーもアプライアンスのサプライヤーも、幅広い展開オプションを利用できるようになった。

 より高価で容量が小さい製品は、ホストまたはストレージアレイのキャッシュとして使用する機能を提供する。SCMをキャッシュとして使う場合、単にDRAMを使用する場合に比べて永続性という利点が加わる。これらの製品はNANDフラッシュに比べて耐久性に優れているため、書き込みキャッシュやアクティブなデータを格納するティア(層)として配置するのに適している。

 ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)ソリューションは、各ホストに展開される低レイテンシの永続メモリの利点を生かすことができる。PCIeバスまたはメモリバスに永続ストレージを配置すると、入出力(I/O)レイテンシが大幅に減少する。しかしこの方式はまた、ストレージスタックの効率の悪さが露呈するリスクがあるため、サプライヤーは問題を迅速に特定し、それを解決したいと考えている。

 DatriumやNetAppなどが発売している分散型HCIソリューションでは、パフォーマンスが大幅に向上するだろう。どちらの場合も、アーキテクチャは各ホストのローカルキャッシュを備えた共有ストレージ上に構築される。NANDフラッシュで高いパフォーマンスが実現するが、Optaneなどの製品を使用して永続的なキャッシュを配置し、高い耐障害性(レジリエンス)も同時に(キャッシュのウォームアップ時間を減らすことで)実現している。Optaneのような高速なメディアを採用した分散型ストレージソリューションも登場し始めている。そうした製品を以下にまとめたので1つずつ見ていこう。

 従来のオールフラッシュアレイに、ここで挙げる高速なストレージ製品が採用され、広く普及するとは考えにくい。ストレージネットワークはオーバーヘッドがあまりにも大きいし、共有コントローラーモデルではスループット(の高さ)とレイテンシ(の低さ)を十分に生かせない。また、ここでは価格も比較要素の1つとして加えている。

 一方、サプライヤーがストレージデバイス全体のパフォーマンスを一段上のレベルに引き上げるため、こうした高速なSCMを採用したティアをストレージに追加することは期待できる。高速ストレージを追加することでパフォーマンスの大幅な改善が実現した場合、悩みどころは、期待できる効果に対してそれだけの費用をかけるのが妥当かどうかということになる。

SCMのサプライヤーまとめ

 今回取り上げている、新たなストレージシステムを搭載した製品を発売しているのはどのメーカーなのか。2016年12月、HPEは3PARブランドのアレイにOptaneをキャッシュとして配置(「3D Cache」と呼ばれる機能)し、そのデモを披露した。当時HPEは、3D Cacheを配置することでレイテンシ値が約250マイクロ秒(以下、μs)まで下がる一方、IOPS値は約80%増加したと主張していた。

 Tegile(Western Digitalに買収された)は、NVMeアレイ「IntelliFlash Nシリーズ」でOptaneのNVDIMM製品を使用しているとみられている。この製品は、200μsという低レイテンシを実現している。

 一方、新興のストレージ専門企業Vexataは、オールフラッシュまたはOptaneを使用する新しいアーキテクチャを開発した。Optaneベースシステムのレイテンシは平常時40μs、スループットは700万IOPS、最小レイテンシは25μsであると同社は主張する。

 2017年8月、分散型ソリューションの新興サプライヤーであるE8 Storageは、Optaneをベースにしたシステム「E8-X24」を発表した。同製品のパフォーマンスに関する数字は未公開だが、レイテンシ値が傑出していると予測されている。E8の既存のNVMeフラッシュシステムを使うと想定し見積もったところでは、100μs(読み取り)と40μs(書き込み)を切りそうだ。

 分散型オールフラッシュストレージの開発に取り組んだ新興企業Apeiron Data Systemsは、共有ストレージシャシー内に24個のNVMeドライブを搭載したシステムを発売している。Optaneドライブを使用した場合、パフォーマンス値は1800万超のIOPS、12μsもの低レイテンシとなると見積もられている。

 Scale ComputingはOptaneを搭載した「HC3」でテストした結果、仮想マシンに対する応答時間は20μs前後だったと発表した。この機能は、Linuxカーネルに統合されたSCRIBEファイルシステムと組み合わせることで有効になる。

 VMwareは2017年3月に「Virtual SAN」とOptaneを組み合わせて実施したテストの結果を発表した。このときは(既存製品と比べ)IOPSが2.5倍に改善しレイテンシは2.5分の1に低減した。Virtual SANでは、従来のNANDフラッシュをオールフラッシュ構成で使用する際にOptaneがキャッシュティアとして機能すると期待されている。

 NetAppは、「ONTAP」ストレージアレイでZ-SSD技術が利用できることを証明した。不揮発性の読み取り専用キャッシュとしてZ-SSDを使用した場合、IOPSの実測値が3倍になったという。NetAppは、2017年5月にイスラエルの新興企業Plexistorを買収。この企業の技術を使用して、NetAppのカンファレンス「NetApp Insight 2017」(11月、独ベルリンで開催)で分散型アーキテクチャを実証した。このとき、約4μsのホストレイテンシで約340万IOPSを達成した。

 各サプライヤーのこうした動きから、既存のアーキテクチャのパフォーマンスを拡張するためにSCMあるいは永続メモリを使っていることが分かる。

 ほんの数年前、ストレージアレイのベンチマークとしてレイテンシは1ミリ秒、IOPSは100万が相場だった。現在、これらの数値はそれぞれ200μs、500万IOPSのラインに近づきつつある。

 新たなアーキテクチャ(HCIおよび分散型)を採用してSANのオーバーヘッドを最小限に抑える動きも出てきている。より高速なストレージが出現した今、このトップレベルのパフォーマンスのために、ユーザーはアプリケーションアーキテクチャを再考してパフォーマンスを最大限に高める必要も生じるだろう。データを格納する際のメディアのオーバーヘッドが縮小しているからだ。

 メディアの未来に目を向けると、3D XPointはまだ世に出たばかりであり、今後数年でパフォーマンスや容量の改善が図られるだろう。他の技術(Z-NANDとSTT-MRAM)は、コストを削減し、競争力を高める必要がある。Huaweiなどの企業が永続メモリ製品を開発し、既に生産しているSSDを強化することを期待しよう。

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