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» 2018年08月08日 10時00分 公開

トイザらスとAmazonの成功の分かれ目(後編):自滅へ一直線、トイザらスが繰り出した戦略ミスの数々

「トイザらスは時間をかけて自分の棺おけを作っていた。Amazonが棺おけを作って、トイザらスをそこに押し込んだわけではない」。トイザらスはどこで間違えたのか。何を間違えたのか。

[Ben Sillitoe,Computer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 7月18日号掲載)では、トイザらスとAmazonの関係を中心に、トイザらスが破綻に至る過程を解説した。

 後編では、トイザらスとは別の道で成功している小売業者の例と、トイザらスが自滅に至った原因を考察する。

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 トイザらスのWebサイトは殺風景だった。だが、玩具を売る方法は他にもある。コンシューマー向けの幅広い商品を扱っている小売業者JMLは独自のショッピングサイトとテレビショッピングのチャンネルを運営し、他社サイトのデジタルスクリーンへの第三者配信を利用して商品を宣伝し、玩具分野でも安定した収益を挙げている。

 JMLのケン・デイリーCEOは次のようにコメントしている。「われわれは玩具でも幾つかヒット商品を世に出した。当社の核となるモデルはビデオを使った宣伝だが、玩具についてもこれを適用している。われわれの玩具がよく売れる場所は、実はスーパーマーケットだ」

 「われわれは、どのチャネルで商品を販売するかについて全くこだわりがない。ただ、コンシューマーに届けたいと願っているだけだ。スーパーマーケットは多数の買い物客が足を運ぶ場所だから、ここではビデオが大きな効果を発揮する。斬新なおもちゃを売り出す場合、それをアピールするにはビデオが最適だ。Hamleys(大型玩具店の老舗)で見るような実演デモもやっている。スーパーマーケットの画面でそのデモのビデオを見せれば、最高の宣伝になる」

 トイザらスがデジタルスクリーンや商品の説明ビデオにもっと注力していたら破綻は防げたという主張は、やや苦しい。JMLのモデルは、トイザらスが実際には別の局面でも競争に直面していたことを示しているからだ。

自ら墓穴を掘る

 何十年も使い続けたような古ぼけたレジやPOS機器が設置されている、英国のトイザらス店舗の画像がソーシャルメディアで拡散され、トイザらスはテクノロジー関連への設備投資が不足していたという印象が広まった。画像の一部は小売業コンサルタントのスティーブ・ドレッサー氏が撮影したものだった。しかし実際には、トイザらスは最近になって店舗にモダンな機器を導入すべく、投資をいくらかは行っていた。

 本誌Computer Weeklyが2017年に取り上げた通り、英国のトイザらスは各店舗に2台のタブレットを導入して店舗スタッフが在庫情報にアクセスできるようになったので、来店客への支援の質が向上した。

 店舗スタッフがこのテクノロジーを活用した場面の一例は、乗用車のチャイルドシートを買いに来た両親への支援だ。チャイルドシートを装着する車種、子どもの年齢、予算をiPadアプリに入力すれば、選択肢をすぐに絞り込めた。

 間違いなく、あれは「少な過ぎる上に遅過ぎる」ケースだった。いずれにしても負債のレベルは身動きが取れないほどになっており、米国で2017年秋に破産を申し立てた時点で約50億ドル(約5475億円)に達していたと明かされた。これでは必要な設備投資は難しかっただろう。

 テクノロジーは同社の関心事ではなかった。ランス・ウィルス氏が同社初のCTO(最高技術責任者)に就任したのは、2016年の夏だったほどだ。

 ウィルス氏は新任のCIO(最高情報責任者)フィル・ニュモイヤー氏と協力し、トイザらスのeコマース事業を運営しようとしていた。しかし今振り返ると、会社の存続が危ぶまれている時期にこうした変化を実現したのは、同社を何とか回復させようという最後の賭けだったようにも見える。

 トイザらスの倒産は、複数の要因が絡み合った結果だ。まず債務超過で、事業上の投資に制限が加わったし、高額商品に対する過度の依存もあった。Amazonから提携の解消を求められていたかもしれない。Amazonなら通常そうする。

 例えば英国の小売店舗は、議論の余地はあるが店舗の立地も家賃の水準も現状にはそぐわないにもかかわらず、長期の賃貸契約に縛られていた。また、店舗での顧客体験も、類似市場のライバルに比べて魅力に乏しいものとなっていた。そんな中でSmythsとThe Entertainerが拡大を続けているのは、両社とも魅力的な店舗空間を作り上げて、顧客体験を強調しているためだ。

 RSRのキルコース氏に言わせれば、トイザらスは間違いなく数十年も前から衰退に向かっていた。しかしAmazonと密接に連携するとした当初の決断と、Amazonとの当初の提携が不調に終わったことが、倒産の発端となった。

 両社の協業は、一方がサードパーティーのeコマースインフラに依存し、eコマースインフラを提供するサードパーティーは玩具の販売手法を学ぶ形となった。そしてAmazonとたもとを分かった時点から、トイザらスは常に他社を追い掛ける立場になった。

 「トイザらスの経営破綻をAmazonのせいにしたくなる気持ちは理解できるが、トイザらスは時間をかけて自分の棺おけを慎重にこしらえていたのだ」とキルコース氏は指摘する。

 「トイザらスは、商品の全カテゴリーについて、コンシューマーがどのように購入しているのか、彼らが明確に示しているトレンドを読み損ねた。コンシューマーの購買行動が根本的に変化しつつあることに気付けなかった。Amazonが棺おけを作って、トイザらスをそこに押し込んだわけではない。Amazonのここ数年の成功は、とどめを刺したにすぎない」

 しかし2000年の状況を振り返ってみると、Amazonが玩具販売事業に目を向け、トイザらスと密接に協力するようになった時点で最初のくぎを打ち込んでいたという主張も確かにある。オンライン界の巨人との提携を計画している他のブランドは、トイザらスのこの物語を検討し、慎重に事を進めた方がよさそうだ。

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