情報部門は一番の“業務コンサル”であれ――コーセー 情報統括部長 小椋敦子氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(3/5 ページ)

» 2018年08月24日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

情報システム担当者はAIで何かやれというプレッシャーを感じている?

小椋: 長谷川さんは、AIにもけっこうチャレンジされていますよね? 今のAIって、“魔法の玉手箱”みたいに思っている方もけっこういますが、画像解析などのレベルは上がっているもののまだまだ課題は多いと感じています。でも、「AIを試さないのか?」というプレッシャーを感じているエンタープライズ系の方も多そうです。

長谷川: 「AlphaGo」や自動運転車のニュースだとか、大学教授やAIのサービスを売っているベンダーの話なんかを聞いて、経営者は「何かできそうだ」と思っちゃうところがありますよね。

 僕が考える今日時点でのAIというのは、文章の形態素解析みたいなことはすごくできるようになっている。例えば日経さんが“AI記者”というのを使って企業のIR情報から自動で記事を作るとかね。ああいうのは、うまくいっていると思います。ただ、僕らの業界の昔からのテーマで自動発注というのがあるんですけど、それの精度が今のAIですごく上がったというのはまだないんですよ。

 僕、AIが得意だという会社さんには、同じことを言ってみてるんです。「うちの過去3年分の売り上げデータを渡すから、最初の2年を読み込んで次の1年を予測してみてほしい。その結果と3年目のデータとを比較して、少なくとも3パーセント以内で近い数字を出したというなら、俺はお前を信じる。一緒にプロジェクトを進めていきたい」と。Amazonが「Machine Learning」(AWSでの機械学習のサービス)を出したときに試してみたんですけど、てんで合わないんですよ。今のところ、人間が予測した方が精度が高いんですよね。

 そんなわけで、今の段階では、AIを使ってわれわれのビジネスですぐに何か、というのは難しいと思ってます。一方で、最近話題になっているRPA(Robotic Process Automation)というのは使おうとしています。昔、Excelでやっている作業をマクロで覚えさせた、そういう感覚ですよね。何回かクリックしたら出てくるという単純作業を1クリックで終わるようにする、みたいな。

はやりのRPAを好きになれないワケ

小椋: 私は、少々否定的なんですよ。RPAは、今は手作業になってるものを自動化しましょうという思想ですよね。しかしシステム部門としては、その作業はそもそも必要か? というところに立ち返るべきで、そのまま自動化するというのは違うなと。

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長谷川: 大賛成。人間て、面倒だと感じたときに、その業務の必要性とか違うやり方とかを考えるわけだけど、なんでもかんでもRPAにしていったら、そういうことを考えなくなりますよね。うちのグループでRPAを使うことを考えたとき、「見ない帳票でもそのまま作っとけ、みたいなことになるからよくないんじゃない?」という人もやっぱりいました。

 ただ、手でやっていたことを自動化しようというのは今までのシステム化と同じことなので、それがRPAという言葉で受け入れられてアクセル踏めるんならいいかな、とも思ってるんです。僕らでいうと、発注とか全部人間がやっている場合じゃなくて、RPAの時代なんだからできるところは自動化して、その分接客の方に力を入れよう、とかね。

小椋: 確かに、オートメーションの考え方は必要ですね。例えば自動発注であれば、適正在庫や在庫の変動を見て必要分だけ発注するというプログラムによる自動化、それこそシステム部門がやらなきゃいけないことじゃないですか。でも、今ITベンダーが言っている「RPAエンジンはこれを使いましょう」という主張は好きではないんですけど。

長谷川: われわれのところで意味があるなと思うのは、例えば1万回クリックが必要だったのが1クリックになるようなことですね。そういう意味では、Webのクロールを自動でやるというのがあるんです。競合店はいくらで売っているか、昔はお店にわざわざ見に行ったんですね。今はそれをWebで、楽天やアマゾンや価格コムをたたいて確認して、うちの値付けというのを考えているわけですけど、これは相当な人力がかかります。100万件の商品を毎日調べるとなると、100万×サイト数を毎日たたくことになるので、機械でやるとかなり手間が削減できる。それをRPAと呼ぶかどうかは分からないですけど。

小椋: それは価値があると思います。絶対自動化できないですからね。

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