SAPが主力製品であるERPの最新版とともに、「インテリジェントエンタープライズ」という企業向けITの新たなビジョンを打ち出した。果たして、どんなユーザーメリットがあるのか。
「これからの企業向けITは、自ら学習して進化し続けるシステムでなければならない」――。SAPジャパンでクラウド事業を担当する宮田伸一 常務執行役員は、同社が先週開いた最新版ERP「SAP S/4HANA」の近況についての記者説明会でこう強調した。
宮田氏が言う「自ら学習して進化し続けるシステム」とは、S/4HANAを中核とする「インテリジェントエンタープライズ」と呼ぶ企業ITの新たなビジョンのことだ。SAPが2018年5月に提唱したもので、今回の会見を機に日本でも初めて基本的な考え方を説明した。S/4HANAの近況については発表資料をご覧いただくとして、ここではインテリジェントエンタープライズの話が興味深かったので、取り上げて考察してみたい。
宮田氏はまず、SAPがインテリジェントエンタープライズを提唱した理由について、外部環境、内部環境、技術の進展の3つの観点から次のように説明した。
外部環境については、「消費者の趣向が多様化し、もはや大量生産・大量消費モデルではグローバル競争を勝ち抜けない」、「企業経営はますます複雑化し、国・市場・事業ごとに対応したきめ細かいデータ基盤が求められる」と分析。
内部環境については、「経営のスピードや効率化への取り組みは待ったなし」である他、特に日本では「マネジメントシステムへのAI(人工知能)活用の期待値が高い」と判断した。
また、技術の進展については、企業向けITの進化の歴史を図1のように示し、メインフレームによるオートメーション、クライアントサーバやインターネットによるビジネスプロセスオートメーション、クラウドやモバイルビッグデータによるデジタル化といった変遷を経て、今やインテリジェント技術によるインテリジェントエンタープライズの時代を迎えていると説明。それによって、企業活動は図2のように、これまでの繰り返し作業は自動化する一方、新たな高付加価値業務が創出されると推察している。
こうした3つの観点における見解のもと、SAPが提唱したインテリジェントエンタープライズの全体像を示したのが図3である。
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