そんなことを考えながらネット検索していたら、こんな記事を見つけました。
この中で筆者は、「デスクトップ分野でLinuxをターゲットとしようとするサードパーティーの開発者のエコシステムを殺した」のは以下のような理由であったと書いています。
(a)物事があまりに早く変化し、オープンソースも独占ソフトウェアも同じように壊れる。
(b)Linuxディストリビューション間の非互換性。
これから分かるのは、開発のスピードが速く、多くの意志決定者が絡んだことで単一の方向性を出せなかった、ということです。それによって、多くのハッカーが“見た目が優れたUNIX”であるAppleの「OS X」に移行した、というのです。「いまだにメジャーなデスクトップAPIが4つある」ということですから、今でも状況はあまり改善されていないようです。
上の記事の最後にこうあります。
Linuxを正常な状態に戻す唯一の手段は、1つのディストロ、1つのベースラインコンポーネント一式に絞り、それ以外は全て諦め、皆がこの単一のLinuxだけに貢献するようにすべきだ。
ただ、その後の締めとして、「頭のいい人たちが最後まで意見の一致をみないだろうけど」とも……。
私は、デスクトップLinuxのユーザーが増えなかった原因は、一貫した使いやすいUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供できなかったことも大きかったのではないかと思います。Windowsの完全なコピーでなくても、Linux内で操作性が一貫していれば、それなりの使いやすさは感じられ、ユーザーも増え、ソフトウェアも増えていったと思うのですが、それを全体で調整する仕組みが働かなかったということなのでしょう。
Linuxの開発の中心はカーネルであり、UI部分は本流ではなかった(MacやWindowsを表面的にまねするのが精いっぱいだった)ということも要因としてあったのかなとも思いますが、多くの人が開発に関わるプロジェクトで優れたUI/UXを開発すること自体が難しいのかもしれません。
私は、UI/UXの設計には、一貫した思想というか、理念が必要だと思っています。それがないと、デバイスの操作のあちこちで操作や動作が異なったり、見た目が違ったりして、結果としてUI/UXが損なわれてしまいます。
UI/UXは「デザイン」であり、理想的には突出した個性が担うものなのではないでしょうか。Appleのデザインは、言うまでもなく、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)のこだわりの結晶ですし、今ではジョナサン・アイブ(Jonny Ive)がその役割を引き継いでいます。Mac開発の際にJobsがフォントにこだわった(ジョブズにカリグラフィーを教え、コンピュータ業界を変えた伝説の神父、83歳で逝去)のは有名な話ですし、初代iPhoneのときにもいろいろな逸話(ある日曜日に突然かかってきた、スティーブ・ジョブズからの電話)があります。
結局、「万人に受け入れられるUI/UXは、カリスマ的な個人によって生み出される」という皮肉な構図になっているようです。
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