「365 使っているけど よく分からん」 ニトリのOffice 365導入、成功のカギは“アンバサダー制度”にあった多機能すぎるツール、使いこなすには?(1/3 ページ)

機能が多いツールほど、その全てを使いこなすのは難しい。家具販売大手のニトリでは、2013年にOffice 365を導入したものの、機能が社員に知られていないなどの課題があった。そこで同社はツールの活用を促す「社内アンバサダー」を設置。大きな成果を挙げているという。

» 2018年11月20日 10時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

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photo ニトリ 上級執行役員 情報システム改革室 室長の齊藤めぐみさん。2018年11月6日に行われた日本マイクロソフトのイベント「Microsoft Tech Summit」で講演を行った

 「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズで知られる家具・インテリア製造販売チェーンのニトリホールディングス。2017年には展開店舗数が500店を超え、31期連続の増収増益を達成するなど業績も好調だ。ニトリといえば、家具の販売ビジネスに目が行きがちだが、同社の情報システム改革室室長の齊藤めぐみさんは「ニトリは“物流”の会社だ」と話す。

 「ニトリの商品は9割以上がプライベートブランドであり、委託も含めて自前の工場で生産しています。そして、それを日本全国に配送できる物流網を持っているのは、家具業界ではニトリだけなのです」(齊藤さん)

 商品企画から製造、物流、販売まで徹底した“自前主義”を貫くニトリだが、その考えはシステムでも同じだ。同社の販売とサプライチェーンを支える基幹システムは、1999年にフルスクラッチで自社開発して以降20年近く稼働しており、今でも毎日10件近いリリースが行われているという。

photo ニトリは基幹システムをスクラッチで内製している

全社で「30MB」しか使えなかったメールシステム

 しかし、この自前主義も「システムについては見直す時期が来ている」と齋藤さん。特に情報システムについては老朽化が進んだ他、社員数が激増したことで、個別最適なシステムが乱立し、サイロ化が進んでしまったのだそうだ。

 「このご時世に信じられないかもしれませんが、2010年ごろはNotesのメールシステムを使っており、全社合わせての容量が30MBしかなかったんです。毎日、終業時間になったら全社員がメールを削除していましたし、そんな状況だからFAXでの連絡がはびこっていました。当然、部署をまたぐ形での情報共有やコミュニケーションなどまるでありません。シャドーITも横行しており、当時はサーバが1000台近くあったと聞きます。システムが複雑化したことで、運用管理に情シス部門のリソースが割かれたことも大きな課題でした」(齋藤さん)

photo Office 365導入前にニトリが抱えていた課題

 そこで同社は、情報システム部門と業務部門が協力し、新たなグループウェアの導入を検討し始めた。グローバル展開を見据えていたこともあり、クラウド型の「Office 365」と「G Suite」が候補に挙がったが、当時7割の製品を中国で製造していたため、グレート・ファイアウォール(金盾)を超えられるOffice 365を採用したという。

 移行自体は大きな混乱もなくスムーズに進み、「便利になった」と喜ぶユーザーも少なくなかった。しかし、導入はある意味ここからが本番だ。機能が多いツールほど、その全てを使いこなすのは難しい。社員に対して、Office 365の活用を促進していくための戦いが始まった。

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