使われるPLMのための3つの条件改革現場発!製造業のためのIT戦略論(3)(3/3 ページ)

» 2004年08月17日 12時00分 公開
[安村亜紀 (ネクステック),@IT]
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低速通信環境でも使えるシステム作りとは

 さらに、Webシステムを構築する場合、パフォーマンスと密接に関係してくるのは、層と層の間の通信環境であることにも注目したい。遠隔地の工場や事業部との接続は数メガ程度の低速回線が一般的であるし、また、営業担当者たちがモバイル環境で活用するPHS通信環境は、64/128kbit/s程度というケースも多い。

 このような低速回線でも使用できるPLMのWebアプリケーションを構築する場合、アプリケーションサーバとクライアント間の通信に関しては、ネットワーク帯域の圧迫を軽減するためデータ圧縮などの工夫も有効だ。また、速度的には若干遅くなるが、セキュリティ確保のためにSSLなどの暗号化は必須となる。

 クライアント側には日付や数値の入力チェックなどのロジックのみ配置する。重いビジネスロジックについては、アプリケーションサーバに移動してパフォーマンス向上を図れるように考慮しておくなどの工夫が必要だ。

 また、パフォーマンス重視の観点から、現状の技術レベルではパフォーマンスが保証されないEJBコンポーネントなどは、注意して活用するか不採用とする(*2004年現在においてPLMシステムに不適切な最新テクノロジについては、次回その理由とともに詳細に解説する)。

 また、RDBMSを直接ハンドルすることにより、高速にデータベースとの間をアクセスできる仕組みとする。このように、RDBMSとは直接アクセスしているので、データベースサイドのパフォーマンスチューンニングも有効な手段となる。併せてユーザー数が増えたときにレスポンスを悪化させないために、まずハードウェアを並列化させて負荷を分散させる。また、ロードバランサ、データベース・クラスタリング(※2)などの活用で、システム規模の変化に順応できるようにしておくことも必要だ。

 PLMシステムの肝となるパフォーマンス、拡張性、保守性を考慮した場合、それらを満たすアーキテクチャとテクノロジの選択はPLMシステム導入において最も重要だ。一生懸命に、あるべき業務を描き、苦労してコード統一とデータ整備、データのモデリングをしたところで、最後にシステムが「動かない」「使い物にならない」では何の意味もない。

 システム活用を含めたPLMプロジェクトを成功させるためには、プロジェクト初期段階からシステム実装する際に最適なアーキテクチャのデザインや方針を固めておくことが、ビジネスモデルの構築やデータ整備と同様に重要なポイントとなる。

 次回は、PLMシステム実装の課題をテクノロジ評価とともにより深く解説していく。

著者紹介

安村 亜紀(やすむら あき)

ネクステック株式会社 マーケティング部 マネージャ。

某大手テレビ番組制作プロダクション、米国ソフトウェアベンダのマーケティング部門を経て現職に。現在、製造業を専門に業務改革支援コンサルティング、データモデリング、システム開発導入をワンストップで手掛けるプロフェッショナルファーム・ネクステックにてマーケティング活動全般を担当する。ワインマニアでもありワインのアドバイザリー活動や寄稿も行う。

ご意見、ご感想、問い合わせのメールは、yasumura@nextechcorp.comまで


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