SLA(えすえるえい)情報システム用語事典

service level agreement / サービスレベル・アグリーメント / サービスレベルに関する合意 / サービス品質保証契約

» 2005年07月03日 00時00分 公開

 サービス提供者(プロバイダ)とサービス委託者(顧客)との間で契約を行う際に、提供するサービスの内容と範囲、品質に対する要求(達成)水準を明確にして、それが達成できなかった場合のルールを含めて、あらかじめ合意しておくこと。あるいはそれを明文化した文書、契約書のこと。

 サービスは物理的な実体のある製品に比べて内容が分かりづらく、提供者と委託者の間で何がどの程度行われるのかに関する認識の食い違いが生じる可能性が高い。特に中長期にわたって提供されるサービスの場合、「最初はよかったが、次第に品質が下がった」「いい場合もあれば、悪い場合もある」といったことが少なくない。そこで、サービスレベルを数値によって明示的・定量的に定義することで、役割と責任の所在について“あいまいさ”を排除し、ルールを定めておくのがSLAである。

 SLAの基準は、客観的な方法で測定できる数値でなければ効果はない。中長期にわたるサービスであれば、定期的に測定(モニタリング)できる基準でなくてはならず、SLAの中に測定方法や測定を行う主体についても記述する。

 SLAによって、委託者にとっては支払いの対価としてどのようなサービスがどれだけ提供されるのかが事前に明確になり、機能とコストのバランスを考慮して最適なサービスを選択することが可能になる。一方、提供者にとっては(和製英語でいう)“サービス”や想定以上の品質を求められることを防ぎ、ビジネスのコスト構造をはっきりさせることができる。また、複数の担当者・事業者が共同してサービスを提供にかかわる場合、責任の所在を明らかにするためにSLAはOLAUCとともに重要な考え方となる。

 もともとは通信事業者がネットワークサービスの通信品質(QoS:Quality of Service)を保証するために行った契約形態として広まったもので、内容的には実効データ転送速度の下限や障害発生時のダウンタイムの上限などに関して基準を設け、その設定値が未達(ブリーチなどという)だった場合の罰則や補償(例:利用料金の減額)などを規定していた。これは1990年代後半ごろ、インターネットが企業や社会の基盤として使われるようになりつつある時期で、ベストエフォートで提供されていたインターネット接続サービスの品質を保証するため取り入れたものだった。現在では法人向けのネットワーク接続サービスのサービスメニューとしてごく一般的に用意されている。

 今日では、通信サービス以外の各種サービスにおいても用いられるようになっており、データセンターなどのホスティングサービス、ASPやネット証券会社のようなオンライン・アプリケーションサービス、企業情報システムの運用・保守アウトソーシング、さらにはコピー機などのOA機器の保守をはじめとする各種のメンテナンスサービスなどにもSLAは広がっている。また、企業内の情報システム部門(サービス提供者)とユーザー部門(サービス委託者)の間でSLAの概念を取り入れる例も見られる。さらにはアジャイルソフトウェア開発など継続的なシステム開発においても、SLAによるソフトウェア品質保証を契約に盛り込む場合がある。

 前述のようにSLAは単に契約時に取り交わすばかりではなく、継続的なモニタリングが大切である。また、SLAを作成する場合も最初から委託側/提供側にとって最適なSLAを得ることは困難であり、締結したSLAを継続的・定期的に見直すことが望ましい。こうした活動をSLMという。

 英国政府がITサービス管理のベストプラクティスをまとめた「ITIL」においても、SLAはサービスサポート(日常的な運用)とサービスデリバリ(中長期の改善)を結ぶ重要なツールとして扱われる。ITILでは、顧客とユーザーを区別し、サービスプロバイダは顧客とSLAを締結し、その内容に沿ってユーザーにサービスを提供することになっている。

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