SOW(えすおーだぶりゅー)情報システム用語事典

statement of work / 作業範囲記述書

» 2005年08月27日 00時00分 公開

 複数の人間/組織がかかわる仕事を実施するに当たり、関係者間で認識の擦り合わせを行うために、その仕事の目標や範囲、成果物、参加メンバーの役割・権限などを記した合意文書。

 SOWには、仕事の目標(ゴール)、範囲、内容・要求仕様、成果物・納入物の定義、納入時期・概要スケジュール、制約条件・依存関係・既知のリスク、作業のプロセス、役割分担、責任および権限、レポーティングルートやコミュニケーション指針、受け入れ基準・成功基準などを必要に応じて具体的かつ詳細に規定する。

 社内プロジェクトチームなどで内部文書として作成する場合もあるが、一般には業務の委託/受託関係において契約書の付属文書として作られることが多い。これは商談/契約プロセスの中では交渉のベースとなるものであり、詳細レベルで「やる」「やらない」を明らかにする。さらに作業遂行時には作業プロセスのベースとなり、事後には契約者が提供した成果物・役務が規定された要求どおりのパフォーマンス(性能・業績)だったかどうかを判断する基準となる。

 プロジェクトマネジメントではWBSWBS辞書から作られる基本文書の1つに位置付けられ、ソフトウェア開発プロジェクトでは頻発する仕様変更などに対応する際の重要な根拠となる。システム運用などのITサービスマネジメントにおいては、SLAを作るための前提であって、障害発生時の対策、責任の所在などを明らかにする根拠となる。

 SOW作成の基本手順は、まず「やるべきこと」を書き起こし、それを基にステークホルダー間で検討して、問題があれば修正する。最終的に承認・合意もしくは契約された時点で正式なルールとなる。

 SOWは業務を受託するベンダ/プロバイダが作ることが多いが、委託する顧客側が主導して作ることもある。顧客がRFPの段階でさほど詳細ではなくてもSOWを作成できれば、要求事項をより正確にベンダに伝えることができ、ベンダの提案書が顧客の希望に沿ったものになる可能性が高くなる。また、委託先選定の段階では(業者が作ったSOWであっても)業者を評価する材料の1つとして利用できる。この意味で、SOWは調達マネジメントにおいても重要なドキュメントである。

 ベンダ側から見たSOWは提案書・見積書などを補完する提供物詳細書/サービス仕様書となる。SOWを作成すること自体が、見積もり精度を高める、無理な受注を回避するといったことにつながる。むろん受注後に契約にない仕事を押し付けられるといったトラブルを避ける意味でも重要なドキュメントである。

 日本では「作業範囲記述書」「役務範囲記述書」「作業指示書」「作業記述書」「役務記述書」「業務仕様書」「作業内容書」「実施項目の定義」とさまざまな訳語が当てられる。いずれもworkを「作業」「役務」と解釈したものだが、米国の政府調達などでは、調達プロダクトの物理的特性(サイズや形状など)の詳細を記した文書もSOWという。

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