ドキュメント流通には“捨てる覚悟”も重要特集:セキュアなドキュメント流通を目指して(5)(2/2 ページ)

» 2010年01月18日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部]
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まずは業務全体を見渡した分析を

 このように業務の性格やドキュメントの特性を分析していくことは、同時にセキュリティのリスク分析を行うことにもつながっていく。各部門でどのようなドキュメントが、どのように使われ、どのように流通しているかを分析することによって、セキュリティ上の“穴”を特定できるのだ。

 また、こうした分析を行うことによって、業務の非効率な部分をあぶり出すこともできる。業務でドキュメントを扱うに当たり、どの作業で余計な時間やコストを費やしているかを切り分けることができれば、作業効率の改善によるコスト削減が可能になる。

 もちろん、不要なドキュメントを廃棄してデータ量が減れば、システム運用管理に掛かるコスト削減も期待できる。このように、ドキュメントの適切な廃棄は、情報漏えい対策のみならず、コスト削減の効果にもつながる可能性がある。

 さらにもう1歩進んで、ドキュメントの有効活用という観点から考えてみたい。昨今、企業内で情報を効率的に共有・活用するためのソリューションが盛んだ。特に、文書管理システムやエンタープライズサーチなどのソリューションが注目を集めている。

 しかし、企業内に散在する膨大な量のデータから有用なものだけを集め、それを効率的に検索できるようにするためには、余分なデータ、ノイズになるようなデータはあらかじめ排除しておくべきだ。やはりここでも、ドキュメントの適切な廃棄が効果を発揮する。「不要なデータを捨てることによって、検索の対象となる情報が明確に絞られ、結果として情報の活用度向上につながる」と米増氏も説明する。

 「ドキュメントの廃棄」は数あるドキュメント関連ソリューションの1つにすぎないが、このように広い観点から見ると、情報漏えい対策のみならず、業務全体に幅広い影響を与えるものであることが分かる。NECではこのほかにもコンテンツ管理やエンタープライズサーチなどさまざまなツールを提供しているが、これらが連携して全体として機能することにより安全かつ効率的なドキュメント流通が実現し、結果としてビジネス全体にメリットをもたらすというのが同社の考えだ。

 同社では個々のドキュメント関連ソリューションを「情報漏えい対策」「コスト削減」「情報統制」という3つの問題領域にそれぞれ対応付けているが、前述のように情報漏えい対策はコスト削減と情報統制にも貢献し、またコスト削減対策はほかの2つにも貢献するというように、お互いが密接に関連し合うものなのだという。

 また米増氏は、個々のツールや機器を導入する前に、まずはビジネスの上流の観点から自社のドキュメント流通の状況を分析することが重要だと説く。実際にNECでは、そうした分析作業を支援するアセスメントサービスも提供している。

 「当社が提供するアセスメントサービスでは、顧客が保有するファイルサーバの利用状況を分析し、その結果を統計レポートとして顧客に提供する。これによって、顧客に自社のドキュメント流通の状況、ひいては業務全体の状況に対する“気付き”を与えることができると考えている」(同氏)。

 また、このように現状の分析結果を定量化して示すことによって、経営層に対してITソリューション導入の有効性を説得しやすくなる効果もあるという。

「集める」「探す」「捨てる」のライフサイクル

 これまで述べてきたように、不要なデータを適切に廃棄することができれば、情報漏えいリスクを減らせるだけでなく、有用な情報を効率的に検索し、探し出しやすくなる。その結果、現場の業務効率が実際に向上すれば、有用な情報を積極的に収集・検索しようという社内的な機運も高まってくる。

 このようにして、ドキュメントを「集める」「探す」「捨てる」という一連のライフサイクルを有効に機能させることによって、業務全体に真に貢献できるドキュメント流通を実現しようというのが、NECが提唱する方法論だ。

 つまり、「集める」「探す」「捨てる」に対しどれか1つに注力するのではなく、全体的にバランスの取れた施策を講じることが、安全かつ効率的なドキュメント流通の効果を最大限に得ることができる方法だというのだ。

 しかし現状では、グループウェアやコンテンツ管理、エンタープライズサーチなど、「集める」「探す」ためのソリューションが注目を集める半面、「捨てる」ための施策を意識している企業はまだ極めて少ない。米増氏も、「データを“捨てる”ことの重要性に対する世間の明確なコンセンサスは、まだ得られていないのが現状だ」と語る。

 情報漏えい防止策では、「情報をいかに出さないようにするか」ということをまず第一に考えがちだ。一方、業務効率を考えると、「情報をいかに出しやすくするか」という発想になる。ドキュメント流通では常にこの両者のバランスの取り方が課題となるが、これに「情報をいかに捨てるか」という観点を加えることにより、課題解決の意外な糸口が見つかるかもしれない。

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