自動化で、集中管理による作業負荷を低減──野村総合研究所特集:仮想環境はここまで管理できる(2)(2/2 ページ)

» 2010年02月01日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]
前のページへ 1|2       

仮想化環境の運用を“最適化”する機能を追求

 Senju Familyの今後について、NRIでは「継続的に新機能開発や現行機能の深堀りを行い、運用の効率化だけではなく、“高度化”を狙える機能を追加する予定」だという。これには大きく2つのトピックがある。

 1つ目は、物理/仮想環境のより高度な一元管理だ。同社 情報技術本部 基盤技術一部の西片公一氏は、「特に、ハイパーバイザーによって仮想化レイヤと物理レイヤが切り離されていることに起因する、障害検知やリソース管理の問題に着目している」という。

ALT 野村総合研究所 グループマネージャー 情報技術本部 基盤技術一部の西片公一氏

 「物理レイヤでネットワーク障害が起こっても、仮想レイヤのゲストOS側では処理のタイムアウトなど、何らかの問題が出るまで障害を検知できない。また、狙ったパフォーマンスを実現するには、物理サーバと仮想サーバの関係を把握したうえで、リソース使用量や稼働状況をきめ細かく見ていく必要がある。そのためには物理/仮想の双方を、一元的に監視することが求められる」(西片氏)

 そこで物理レイヤの監視機能を強化し、ホストOSのカーネル稼働ログを監視してハードウェア障害を検知するほか、ホストOSにおける変更・操作イベントなどの情報も収集する。これらの情報を仮想レイヤの情報とともに単一画面に表示し、物理/仮想の一元管理を支援していく。

ALT 図 今後は仮想化ソフトウェアの種類を問わず、Senju Operation Conductorで一元的に管理・制御可能とする。VMware以外の各種仮想化ソフトウェアについては「スピード感を持って順次対応する」という
ALT 野村総合研究所 システムマネジメント事業本部 主任システムエンジニアの安部健一郎氏

 また、現在のVersion 10.0では物理サーバ、仮想サーバの稼働状況を個別には監視できるが、今後は「物理サーバAに障害が出ると、仮想サーバB、Cに障害が及ぶ」といった情報の収集と定義を自動化し、システムの構成定義情報を人が詳細にたどって調べずとも、システムで把握可能とするよう開発を進めているという。

 同社 システムマネジメント事業本部 主任システムエンジニアの安部健一郎氏は、「これにより、構成管理の影響情報と連動することで、ある物理サーバで障害を検知したら、そこで稼働している仮想サーバを自動的に別の物理サーバに移動する、といったことも可能になる」と解説する。

作業負荷低減とガバナンスを両立

 そして2つ目は、サービスデスク製品「Senju Service Manager」の変更管理機能により、仮想サーバのプロビジョニングにガバナンスをもたらすことだ。

 現在も、仮想環境における障害発生時の対応や、仮想サーバの新規導入などを「Senju Operation Conductor」で自動化することで、仮想環境の運用管理を簡便に行えるようになる。しかしガバナンスや規律なしに運用を行えば、仮想サーバが乱立してコスト削減・リソースの効率使用に逆行してしまう。

 そこで、今後「Senju Service Manager」では、ユーザー部門から仮想サーバ配備の申請を受け付け、承認者(変更管理委員会)などに申請を回して承認されると、「Senju Operation Conductor」に処理を引き渡して自動的にプロビジョニングを行う機能の搭載を検討しているという。すなわち、仮想サーバ利用の簡便さが、サーバ管理者の作業負荷増加につながらないようにするとともに、管理プロセスの標準化によるITガバナンス向上にも寄与しようという狙いだ。

ALT 野村総合研究所 副主任コンサルタント システムマネジメント事業本部の應和周一氏

 同社 システムマネジメント事業本部の應和氏は、Senju Family開発について、「日本には日々のきめ細かな業務改善を重視して発展してきた企業が多く、Senju Family もそうしたユーザーの傾向に合わせ、地道に機能強化を積み重ねて支持を獲得してきた。仮想環境の運用管理の可能性についても、実現が非常に難しい理想論を提案するのではなく、従来同様“半歩先のソリューション”を提示し続けたい」と解説する。

 今後の機能強化についても、「仮想化技術は業務に役立てるためのもの。各機能がユーザー部門の業務にどう役立つのか、運用管理者の作業をどう効率化できるのか、そしてそれがどう業務に役立つのかという視点を大切に、あくまで導入容易性と実現内容を意識した顧客目線の提案を図っていきたい」と述べている。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ