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「I-BLOCK」――LEGOブロックをつなげば、それが「プログラム」になるヘンリック・ルンド教授インタビュー(2/3 ページ)

» 2004年02月06日 16時47分 公開
[こばやしゆたか,ITmedia]

ARITHMETIC BRICKS

 「(ノートパソコンで、ムービーを見せながら)これが簡単な作品。バッテリーユニットの上にマイクユニットがつながって、その上にモーターがつながる。これで、こうやってマイクの前で手をたたくと、モーターがぶるぶる回るんだ」

 それがプログラムなしで?

 「その通り。ただ一緒につないだだけ」

 「すごい!」って、思わず日本語で切りかえしてしまった。

 「ははは。こうやってブロックをつないでいくそのことがプログラミングになるわけだ。OK、(袋からブロックをいくつも取り出しながら)こいつらがARITHMETIC BRICKSだ」

 バッテリーの上にディスプレイをつなぐ。ディスプレイには「NO INPUT」の表示が出る。そこに、タッチセンサーブロック(小さな押しボタンスイッチが2個付いたブロックだ)をつなぐと、ディスプレイに数字が表示される。タッチセンサーのボタンを押すとその数字が1ずつ増えて、反対のボタンを押したら1ずつ減った。カチャカチャやりながら、数字が“6”になったところで、タッチセンサーブロックを外す。

 「OK。これでこのブロックは『6』になった」

 次にポテンショメーターブロックを取り出す。これには小さなダイヤルが2個付いている。これを同じようにディスプレイにつなぐと2個のダイヤルで2桁の数字を作りだすことができる。『0』『4』として『4』を作った(*4)。

 次に「−」というシールが貼られたブロックを取り出す。

 「これが、引き算をする『マイナスブロック』だ。」

 ディスプレイの上にマイナスブロックをつないで、その上に『6』と『4』をつなぐ。

 「どうかな、なんて表示されるかな……。6マイナス4……『2』。Good!」

 つぎに、『6』『4』『マイナス』をひとかたまりのまま引き抜いて、代わりにディスプレイに『プラス』をつなぐ。その『プラス』の左側に『6』『4』『マイナス』かたまりをつないで(半分はみだす)、右側にポテンショメータで作った『10』をつなぐ(*5)。

 「いくつになると思う……?」

 私も、(6-4)+10 なんてメモを取りながら、計算をする。12だ。

 「(ディスプレイを見て)OK。12だ。今、(6-4)ってメモを取っていたけど、こっち側の(ひとかたまりの)ブロックが、まさに(6-4)を意味するわけだ。この(6-4)をまた一つのユニットとして、他で使ってもいい。さらにこれ全体で、{(6-4)+10}っていうユニットにもなる。ブロックを違うようにつなげば、また違うアウトプットを得ることができる。物理的な形の違いが、機能的な違いにもつながるわけだ」

CELLULAR AUTOMATA

 「違う機能のブロックを紹介しよう。これは『言葉』のブロックだ。例えば、これで難読症(dyslexia)の子供たちに、言葉を学習させることができた」

 「(ノートパソコンのムービーを見せて)これはイタリアのシエナ大学のパトリッツィア・マルティ(Patrizia Marti)のグループとの共同研究なのだけど、こどもたちが言葉を学習しているところだ。今までの、(普通の)やりかたでは、こういうときにカードを使う。例えばこれで、『the』『Boy』『eats』『chicken』になる」

 「これをI-BLOCKでやるとこういう風になる」

 そう言って、さっきとは別の袋からブロックを取り出す。各ブロックは、『8個のLED』のブロックなのだけど、それぞれに『bike』『ball』『boy』『kicks』『the』『a』と書かれたシールが張ってある。これを、バッテリーブロックの上に『the』『boy』『kicks』『a』『bike』の順に積んでいく。『bike』が一番上。文は下から読むことになるのだ。

 最後にディスプレイとサウンドブロックをつんでしばらく待つと、下からLEDが順番に点灯していって、最後に電子音のファンファーレがなる。正解というわけだ。

 『bike』を『ball』と取り替えて“the boy kicks a ball”としてももちろん正解。でも、『a』のブロックを取り除いて"the boy kicks ball"にすると、ブッブーの不正解の音になってしまうのだ(*6)。

 では、"the ball kicks a boy"って積んだらどうなるんだろう?

 「どうなると思う?」


*4 最初は『1』『0』を作ったのだけど、そのあと接触が悪いのかうまくいかなかったので、別のブロックでやりなおした。

*5 この『10』は、さっきうまくいかなかったものの再利用だ。今度はうまくいった。

*6 「a」を忘れるなんてわたしのお得意の間違いである。きっとこの日も何度もこのミスをしていたに違いない。

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