レビュー
» 2004年04月30日 12時23分 UPDATE

レビューソニーのハイエンドAVアンプ「TA-DA9000ES」を試す (1/4)

ソニーのハイエンドAVアンプ「TA-DA9000ES」を2週間ほど試用した。低音の締りの良さや中高音の透明感の高さなど、ピュアオーディオ用としても音質は十分満足できるもの。また、特筆したいのは9.1チャンネル使用時の音の自然さとサービスエリアの広さで、良質なホームシアターを考えるなら、一考に価する製品だ。

[本田雅一,ITmedia]

 ソニーの音作りの哲学をインタビューした記事でテーマの一つになったソニーのAVアンプ「TA-DA9000ES」を試用した。ここでは便宜上、通りの良い“AVアンプ”という言葉を使ったが、開発プロジェクトを率いた金井隆氏は「マルチチャンネルインテグレーテッドアンプ」と呼んでいる。AVのためだけのアンプではない。そう主張したいからだという。

 では実際のDA9000ESは、どのような製品なのか? 金井隆氏への質疑応答を織り交ぜつつ、2週間ほどの試用の間に感じたことをまとめてみた。

jn_da9000es.jpg ソニーのハイエンドAVアンプ「TA-DA9000ES」。実に5年ぶりに投入された新製品である。搭載されるデジタルアンプS-Master Proは、実に90%以上のエネルギー変換効率で発熱も非常に少ない
jn_ampmodule.jpg S-Master Proのアンプモジュールを裏側から見たところ。左側のモジュール上に4個並んでいるのが出力段のMOS-FETだ。熱によるパッケージの歪みを避けるため、ベアチップで実装され、右のモジュールのように柔らかい絶縁素材でカバーされている

今回の記事でフォーカスしたところ

 現在のAVアンプ、特にメーカー希望小売価格で50万円を超える製品ともなると、機能が豊富で、テーマを絞り込まなければ十分に製品の特徴を紹介することができない。そこで、今回は開発者自身へのインタビューにおいて話題になった“音楽再生用のマルチチャンネルアンプ”として用いる場合を中心に紹介しようと思う。

 AVアンプは音楽だけでなく、映画の音声を再生するためにも利用する。DVDに入っているドルビーデジタルやdtsなどのマルチチャンネル音声は、映画ソフトの場合、劇場用に作られた音声のマスターから作られるという。従って劇場用とDVD内の音声はほぼ同一。

 しかし、劇場にはサイドにチャンネル数よりもはるかに多いスピーカーが配置されている上、そもそもの音響特性や部屋の大きさが異なるため、そのまま再生しただけでは、映画館のような音響体験を得ることはできない。そのため、映画ソフトを視聴する際には、映画館の音響をシミュレートする効果をDSPで施してから再生させることが多い。

 また、爆発音や金属が擦れ合う音、ガラスの割れる音、あるいは心理的に緊迫感を与える体で感じるほどの低音など、音楽とは異なる要素の音が映画の中には多数含まれている。映画での迫力を重視するなら、クリアで音楽的なハイファイオーディオではなく、メリハリのあるサウンドの方が合うようにも思える。

 しかし金井氏によると「オーディオとAVで求められる音が異なるというのは迷信だ。実際に優れていると言われる映画のダビングスタジオを訪問し、施設見学などもしたが、良い音の映画館は、間違いなくHi-Fiオーディオとしても一流の音ばかりだった」という。

 では映画らしい音色や迫力はどこで作られるのか?

 「機器自体、特にアンプがAV的に迫力ある……といったことはありません。AV的な部分は主として、サウンドトラックを作る際、効果音などと一緒に元音声に付加され、サウンドトラックの中に刻まれることで生まれます。後は『映画館』という箱とスピーカーの配置ですね。その辺を民生機器が“機器の音色調整”という形でアプローチすると、『AV的』というのができてしまう。私はスピーカー環境はやはり9.1チャンネルみたいなことをして映画館と同じにし、後の箱の部分はデジタルシネマサウンドのようなDSP技術で再現すべきだと思います。つまりアンプ自体はハイファイなものが好ましいんです」(金井氏)。

 そこで今回は、DA9000ESがどのようなアプローチで音を扱っているかを中心に紹介することにしたい。

SACDが生きるiLINK接続

 DA9000ESはデジタル音声信号を、アナログに変換しないまま増幅し、スピーカーの直前でアナログ信号へと戻す。このため、DSP処理などを行った場合の演算ロスによる情報量低下を除けば、入力信号のクオリティ低下を極限まで下げられることになる。DSP演算を行わなければ、情報量低下は生じない。

 またコンテンツプロテクションに対応したiLINK経由でのDSD信号入力もサポート。DSDとは“Direct Stream Digital”の略で、アナログ信号の電圧変化を1ビットストリームで記録するフォーマットだ。SACDには2チャンネルおよび5.1チャンネルのDSD音声が記録されている。これをデジタルデータのまま入力し、アナログに変換することなく増幅する。

 まずはDA9000ESと同時発売されたiLINK出力付きSACDプレーヤー「SCD-XA9000ES」を接続してみた。DA9000ESが正式に対応しているiLINK対応プレーヤーはこの機種のみである。比較対象は2チャンネル再生がマランツ「SA-14」とソニー「SCD-XA777ES」、マルチチャンネル音声はSCD-XA777ES。XA9000ESのアナログマルチチャンネル出力とiLINK出力も比較してみた。

 アナログ入力時のDA9000ESは、デジタルアンプといったことを意識させない、ごく普通に良い音だ。プレーヤーによる違いもハッキリ分かり、SA-14の解像感の高さやXA777ESの音の滑らかさは、筆者がこれまで使ってきたピュアオーディオ用2チャンネルアナログアンプと同様に全く失われない。もちろん、アンプの違いによるキャラクターの差はあるが、デジタルアンプだからといって構える必要はない。

 むしろ低音の立ち上がりの速さ、“余韻を含んだ空気感”といったものがよく出ており、本機の価格帯やAVアンプという商品カテゴリーからすると、十分以上に満足できる品質だ。低域の締まりの良さや、中高域から上の透明感、抜けの良さを求めるならば、音楽用2チャンネルアンプとしても魅力的に思う。

 これをiLINK接続されたXA9000ESに切り替えると、アンプとしてのキャラクターは同傾向だが、音像がクッキリとしてブレがなくなってくる。

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