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» 2004年05月17日 20時41分 UPDATE

第3回:輸入音楽CDは買えなくなるのか?「求めたのは還流阻止。CDでは他に方法がなかった」――レコ協に聞く (1/2)

今回の著作権法改正では、レコード業界、中でも日本レコード協会が輸入権の導入を積極的に働きかけたという。レコ協はどういう意図でそれを望んだのか。他に方法はなかったのか、同協会に尋ねてみた。

[渡邊宏, 中川純一,ITmedia]

 「私たちが求めたのは邦楽CDの還流阻止。それだけです。日本のレコード業界はこれからアジア、特に中国に出て行こうとしています。そのためには還流の歯止めになる措置が必要でした。方法はどういうものでもよかったんです」。日本レコード協会広報部の新屋泰造氏は、今回の著作権改正問題について、同協会の立場をそう説明する。

 「実際、今春には還流CDの影響についてメディア向けの説明なども行っています。現在では話の焦点がすっかり別の方向(洋楽CDの輸入問題)に移ってしまっていますが、(規制対象を邦楽のみに絞るれるかどうか)それは法律の技術的な問題。レコ協としてコメントする立場にはありません」(同)

 還流CDは2002年で68万枚。不況といわれるレコード業界だが、この還流CDが各レーベルの業績に大きな影響を及ぼしているとは思えない。しかし、レコ協によれば、なんらの対策も施さなかった場合、還流CDは2007年には244万枚、2012年には1265万枚に増加すると予測している。日本のレコード業界のアジア進出が進むに従って、還流CDも急増するというわけだ。

 日本で売れても、中国で売れても、CDが1枚売れたことには変わりはない。海賊版でないなら、著作権者の権利は保護されているのではないか――そう思えるが、実際にはそうではないという。

 文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会第4回会合で、このあたりの疑問についてのやりとりがなされている。「アーティストは一般的な国際契約ルールに従えば、外国でレコードが販売された場合、ロイヤリティは大体2分の1である。韓国や中国などはほとんど、レコードは日本の3分の1の価格で販売されているので、アーティストのロイヤリティは6分の1になる」。

 目下、アジアにライセンス供給されている邦楽CDの20%が還流していると言われる。その規模が大きくなれば、それだけアーティストたちの利益が侵害されていくというわけだ。

 もっとも、これは法改正より先に、ライセンス契約の適切な運用で処理するべきである問題とも思える。実際、連載1回目の記事で取り上げたシンポジウムに登場したHEADZ代表の佐々木敦氏やEast Works Entertainmentの高見一樹氏など輸入盤ディストリビューターを兼ねている人々は、その経験から「ライセンス先に依頼すれば、平行輸入盤の流入を抑えることができる。これはライセンス契約の運用で対処すべき問題だ」という趣旨の発言をしている。

 同様に、還流CDも著作権法改正以外の手段でまず対処すべきではないだろうか。

 この点について、レコ協側は「可能な努力はすでにやっている」と反論する。「例えば発売日をずらしたり、生産枚数を現地の事情に合わせて絞り込んだり。ライセンス上も現地での販売に限定する契約を盛り込み、帯やパッケージなど商品上もそれを表示するようにしています」(同協会)。しかし、そうした措置をとっても、還流の際には帯などが外されてしまうのだという。

 「ライセンシーへの指導も十分にやっている。しかし、いったん市場に出てしまうとそのコントロールは困難で、還流を止める手立てがない。だから輸入権が必要になる。実際、世界65カ国で輸入権が認められているのは、他にうまい手段がないからに他ならない」(同協会)

理想はリージョンコード導入?

 日本レコード協会の新屋泰造氏に話を聞いていて印象的だったのは、音楽CD、つまり「CD-DA」自体がその限界を表しつつあるのではないか、という認識だった。

 登場から20年余を経た音楽CDでは、厳密な著作権管理の仕組みを盛り込むことが不可能だ。CCCD(コピーコントロールCD)では、DVDのリージョンコード(地域コード)に類した仕組みを盛り込むことが仕様上、用意されているといわれる。これを使えば、輸入権などの法規制をしなくても、還流CDを防ぐことができるように見える。

 しかし、これを実際に運用するにはハード側も対応することが不可欠。だが、すでに大量に出回っているCDプレーヤーはこんな仕組みのことなどまったく“知らない”から、いくらディスク側でプロテクトしても無意味だ。DVDのように普及前にこの仕組みが盛り込まれれば、ハードメーカー側も対応しただろうが、今さらCDプレーヤーなどでCCCD用のリージョンコードに対応するのは、メーカー側でも乗りにくい話だろう。

 「DVD-VideoやSACD(SuperAudio CD)など、きちんと著作権管理ができる媒体にできるだけ早く移行してほしい。あるいはセキュアな音楽配信とか。本音を言えば、そうなんですが、ただ現にこれだけCDプレーヤーが普及している以上、それを無視することはできません」(新屋氏)

 「ただ、昨年あたりからいろいろな方法論がそろってきたと思います。いよいよ過渡期が来たのかなと。今、音楽市場は落ち込んでいます。その復活はあると思いますが、CD-DA市場がもう一度復活することはないと思います。そろそろ次の世代へ進んでいかないと」(同氏)。

 ある意味、「輸入権」を導入せざるえないのは、時代的に著作権管理という仕組みが盛り込まれていなかったCD-DAから、次の規格に移るまでの過渡期ゆえ――それがレコ協サイドの認識といえるのではないだろうか。

本当に輸入盤は継続できるのか?

 著作権法の改正――輸入権の導入にあたって、一般ユーザーが一番不安に感じているのは、邦楽CDの還流だけでなく、洋楽CDの輸入盤までがストップさせられるのではないか、ということだろう。

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