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「H.264/AVC改良版」で動き出すか? 次世代光ディスク情勢(3/3 ページ)

» 2004年07月09日 20時29分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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BDにはH.264/AVC FRExtが採用される?

 BD陣営は映像をアドバンスド・コーデックで再圧縮してBD-REに録画することは、今のところ考えていないようだ。BD-REは1層25Gバイト/2層50GバイトのBD-RE 1.1が決まったが、その上で使われる論理フォーマット仕様にアドバンスド・コーデックは含まれていない。来年早々にも、2倍速書き込みのBD-RE 1.2がアナウンスされる予定だが、その時点でアドバンスド・コーデックを入れる予定はない。

 しかしBD-ROM(以前の記事でROMメディアをBD-ROとお伝えしたが、別資料ではROMとなっているためここではBD-ROMと表記する)には、何らかのアドバンスド・コーデックが含まれる。現在のスケジュールでは、7月中にもBD-ROMで採用するアドバンスド・コーデックの選定が幹事メンバーによって行われ、今年9月に行われるBDA総会でアドバンスド・コーデックを含んだ論理フォーマット仕様が発表される模様だ。年内にはJava対応やネットワーク対応などを含んだフル仕様が決定する。

 BD-ROMの論理フォーマット仕様に含まれるアドバンスド・コーデックには、H.264/AVC FRExtに加え、HD DVDと同じくMicrosoftのVC-9も議題に上る見込みだ。H.264/AVC FRExtとVC-9は、非常によく似た技術的特徴を持っているため、両方を実装することに関しては懐疑的な意見もある。

 VC-9にはインターレス映像ソースを圧縮するためのプロファイルが(現時点では)存在しないため、映画以外の素材に関する仕様が不確定という問題もある。しかし、HD DVD寄りのMicrosoftに対するアプローチとして、政治的な決着で両方とも採用という道もあるかもしれない。

 いずれにせよ、8〜12MbpsでMPEG-2/24Mbps同等以上の画質を実現できるアドバンスド・コーデックは、BD-ROMにも搭載されることになる。仮にH.264/AVC FRExtを使った場合、BD-ROMの1層ディスクに12MbpsのHD映像を3時間+オーディオ3言語+SDボーナス映像6時間を詰め込むことが可能だ。もしくはテレビシリーズをSD品質で18時間分、といった選択もできる。

 ハイビジョン放送の録画という視点では、当面の間、MPEG-2が使われる見込みのため、2層ディスクが必要になるだろうが、パッケージメディア向けとしては、ほとんどの商品が1層ディスクで十分となるかもしれない。このことはディスク製造コストの面で有利に働くだろう。

 ただし、当初いわれていた予定よりも、BD-ROM再生に対応可能なBDレコーダーの登場は先送りになる。

HD DVDもH.264/AVC FRExt?

 当初、BD-ROMの論理フォーマットにアドバンスド・コーデックは含まれない予定だった。しかし、H.264/AVC FRExtの評価が良好だったことを受けて、急峻にアドバンスド・コーデックの採用が進んだものと見られる。加えて著作権管理技術に関する仕様変更などもあり、以前、ソニーの西谷氏が話していた「6月〜7月にはROM仕様を決定し、年末の新製品ではROM再生に対応したハードウェアを」というシナリオは変更になったと見られる。

 アドバンスド・コーデック採用となると、デコーダチップを搭載していなければならず、また著作権管理技術の変更などもあって、とても年末の製品に採用することはできないからだ。BD-ROM再生が可能なハードウェアは来年以降と考えた方がいい(もっとも、BD-ROMパッケージソフトは、来年末以降にしか発売されないのだが)。

 一方、すでにH.264/AVCの採用を決めた後のHD DVDはどうなるのか?

 東芝の山田氏は「DVD ForumでHD DVDのアドバンスド・コーデックに、H.264/AVCとVC-9を採用することは決めた。しかし、どのプロファイルを用いるのかといった、完全な仕様確定までは行っていない。現行DVDの時もMPEG-2の完成前にMPEG-2を採用することを決定していたが、それと同じだ。従って、H.264/AVC FRExtが良いというのであれば、H.264/AVC FRExtをHD DVDで利用するプロファイルにすればいい。そうした細かい仕様の決定は、年内までかけてゆっくり行う」と話した。

 東芝はH.264/AVCのデコーダチップをSandVideoと開発していたが、H.264/AVC FRExtの元になった8×8トランスフォームなどのアイデアは、元々SandVideoが提案したものだった。同様の技術はVC-9でも利用されており「H.264/AVC FRExtが出てきたからといって、HD DVDの予定に変わりはない(山田氏)」と強気である。

 いずれにせよ、HD DVD、BD-ROMともにH.264/AVC FRExtが使われることが確定的になってきた。これと並行して、様々な新しい動きも起きつつある。ここ数カ月、水面下の動きばかりが激しかった次世代光ディスク関連の話題だが、これから秋にかけてさらなる激震へと動き始めた。アドバンスド・コーデック以外の話題については、機を見て少しづつ明らかにしていきたい。

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