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» 2004年10月13日 17時53分 UPDATE

家庭向け進出への伏線――キヤノン、LCOSプロジェクター

キヤノンが、LCOS採用のプロジェクター「SX50」を発表。独自開発の光学エンジンにより、従来のLCOS機で難しかった高輝度と高コントラストの両立を可能にした。

[西坂真人,ITmedia]

 キヤノンは10月13日、液晶プロジェクターの新製品“キヤノンパワープロジェクター”「SX50」を発表した。11月下旬から発売する。価格は62万7900円。

photo “キヤノンパワープロジェクター”「SX50」

 「原理から新しい」をコンセプトにしたSX50は、表示デバイスに「LCOS(Liquid Crystal on Silicon)」を採用。同社が独自に開発した光学エンジン「AISYS」と組み合わせることで、リアルSXGA+(1400×0150ピクセル)の高解像度表示と2500ルーメン/1000:1という高輝度・高コントラスト比を可能にした。

photo LCOS(左)と従来製品に多く採用されている透過型液晶(右)の違い

 LCOSデバイスは、日本ビクターの「D-ILA(Direct-Drive Image Light Amplifier)」の0.7インチ(アスペクト比4:3)タイプを使っている。

 リアルSXGA+対応機ながら、サイズは284(幅)×286(奥行き)×96(高さ)ミリで重さは3.9キログラムと「クラス世界最軽量」(同社)の軽量コンパクトボディに仕上がっている。価格も従来のリアルSXGA+対応機が100万円以上したのに対して、60万円前後という低価格な点も魅力だ。

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 LCOSデバイスは、従来プロジェクターが多く採用している透過型液晶パネルの欠点であった投写画面の黒い格子縞が目立たず、滑らかな画像表現が可能なのが特徴。半導体プロセスで製造するため高密度化しやすく、小さなパネルサイズで高解像度が可能な点も魅力。また画素間の隙間もほとんどないため、細かい文字や線などがクリアに表現でき、表計算ソフトやCADソフトなど情報量の多い映像表示に強いというのもメリットだ。

photo 投写画面の黒い格子縞が目立たないシームレス画像
photo 高解像度もLCOSの魅力

 いいこと尽くめの表示デバイスなのだが、それではなぜ、これまであまりプロジェクターに採用されなかったのだろうか。

 LCOSの光学系で必須となる偏向ビームスプリッターは、傾いた光に対して光漏れが発生してしまう。輝度をかせぐために照明系を明るくすると、光の入射角が大きくなって光が漏れてしまい、それがコントラストを悪くするというのが従来のLCOSプロジェクターの課題だった。

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 「照明系で明るさをかせげない従来のLCOSプロジェクターは、ランプ容量を上げることで輝度を高めていた。だが、ランプの電力が増えると大容量電源や冷却システムなどで本体が大きくなってしまう。そのため、明るさとコントラストのバランスがいい透過型液晶パネルに対抗できなかった」(同社)

 同社では、このようなLCOSの弱点を克服するために光学系から全面的な見直しを実施した。

 「偏向ビームスプリッターで傾いた光に対してコントラストが悪くなるというのは、偏向を分離する方向のみの現象で、それと直交する方向なら光漏れは発生しない。この原理を応用して新開発の光学エンジン・AISYSでは、縦成分の照明光を収束光として使って輝度をかせぎ、横成分の照明光を平行光として使ってコントラストをかせぐというように、縦・横方向の光をそれぞれ独立してコントロールすることで高輝度と高コントラストを両立させた」(同社)

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 データプロジェクターに種別されるSX50の主な用途は、プレゼンテーションなどビジネス向けだが、高精細さを生かしてCAD・建築系や医療分野などでの活用も期待される。

 だが一般ユーザーとしては、ホームシアター向け製品の展開に注目したいところだ。

 「LCOSと新開発の光学エンジンを活用すれば、ホームシアター向けに相当良い製品ができるとは思うが、家庭向け市場の展開まだ未定。だが、ビジネス向けのSX50は光学エンジンを高輝度方向にふっているが、ランプ光量を抑えてコントラスト比をかせぐ仕様にすれば、2000:1まで出せる実力がある。映像エンジンなど“画作り”の部分でノウハウが必要だが、家庭用も将来的には前向きに検討したい」(同社)

photo 発表会では、ホームシアター環境でハイビジョン映像を映し出すデモンストレーションも行われた。「輝度を抑えるモードを搭載しているので、SX50でもホームシアター用途に十分使える」(同社)

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