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「NIRO」に込められた中道流“シアターサウンド”劇場がある暮らし――Theater Style(1/6 ページ)

» 2005年02月04日 09時59分 公開
[浅井研二,ITmedia]

 ホームシアターの定義など明確にはないが、仮に、適度な大きさの高精細画面とサラウンド音響を備えた環境だとするなら、その双方をすでに導入している家庭は、全体の1割にも満たないと思われる。薄型大画面テレビの人気により、映像環境の面では急速に普及が進んでいるようだが、一方で、サラウンドシステムの導入には躊躇してしまう人がまだまだ多いようだ。

 それはなぜか。

 価格が高いからだろうか? いやいや、「レビュー特集:5万円以下の5.1chサラウンドシステム」でも取り上げたとおり、最近は低価格でも質のいい製品が出てきている。

 では、単に存在を知らない、あるいは、必要性を感じないのだろうか? 数年前ならいざ知らず、サラウンドという言葉の認知度はすでにそれなりに高く、また、映画を観るためのソースはビデオテープからDVDへと完全に移行した。DVDで映画を観るなら、サラウンド再生したほうがよいとは多くの人が承知しているに違いない。

 やはり問題は“設置”なのだろう。

 薄型テレビだけならどこにでも適当に置けばよさそうだが、サラウンド音響をきちんと鳴らすには、音響特性など、一定の条件を満たした専用の部屋が必要なのではないか? 音質面で多少妥協すればリビングでもかまわないとしても、5.1ch分のスピーカーを置くスペースなど確保できるのか? 置けたとしても、日常生活ではじゃまでしょうがないのではないか?そんな不安がよぎっても、しかたない。

 しかし、そんな状況を打破すべく、環境や設置面での敷居をぐっと下げる提案をしているホームシアター機器メーカーが存在する。それが「レビュー特集:フロントサラウンド製品」でも取り上げた「NIRO 600」を発売するniro1.com(ニロウワン・ドット・コム)だ。

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 niro1.comは、ナカミチで代表取締役社長だった中道仁郎氏が中心になって設立(旧社名メカニカルリサーチ)。現在でも現場の先頭に立ち、開発の陣頭指揮をとっている。

 今回は、niro1.com社長の中道氏に、ホームシアター製品に取り組む同社の技術・思想・展望をうかがった。

photo niro1.com社長の中道仁郎氏

ITmedia: 現在は、5chを1ユニットに収めたスタイルがNIROシリーズの主体になっているようですが、当初からそうだったわけではないですよね。

中道氏: 2002年に、ホームシアター用サウンドシステムとして初めて提供を開始した製品は、3ch分のスピーカーを入れたユニット2基を前後に設置する「NIRO TWO 6.1」でした。もともと映画館でもきっちり再生しているところは少なかったんですが、現在の映画パッケージでは、真後ろのチャンネルも使う6.1ch音声の採用が増えています。その6.1chディスクリートサラウンドを家庭でも手軽に楽しめるようなものを、と考えたわけです。その「NIRO TWO 6.1」を発売したあと、「1ユニットずつとはいえ、やはりリアに置くのは難しい」という意見を多く耳にしたので、「フロントだけでの実現は無理なのか?」とシングルスピーカー・タイプの開発に取り掛かりました。

ITmedia: 2003年に発売された「NIRO 1.1」ですね。たしかに、一般的な家庭環境では、全チャンネル分のスピーカーを使うのとフロント1ユニットでは、導入時の懸念は雲泥の差だとは思います。

中道氏: 以前は自分でも、5.1chシステムをリビングに組んでいたんですが、2週間ほど出張に出かけるとリアスピーカーが(家人に)片付けられてしまう。何回元に戻してもダメ(笑)。それに、ホームシアターがなかなか広く普及しない理由にはさまざまあると思いますが、やはり、ディスクリート5.1ch製品だけでは「置けるはずがない」と捉える人が多い。それに配線はどんなに複雑になってしまうのかと、不安にもなるでしょう。

ITmedia: 家族の理解が必要になる?

中道氏: 従来のハイエンド・オーディオ製品は、ホビーという範疇で、そのほかの趣味対象と同じく、自分の小遣いで買って、自分だけで楽しめばいいという感覚でした。しかし、ホームシアター製品は、いい意味でも悪い意味でも、必ず家族を巻き込みます。同意を得て、家族全員で買い、共通のスペースに置いて楽しむ。それには設置場所をどうするとか、掃除のときにじゃまにならないかなど、奥さんの意見も大事でしょう。

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