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ホログラムは“夢の次世代メディア”か?(1/2 ページ)

» 2005年02月04日 18時55分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 現在、次世代光ディスクとして注目されているのはBlu-ray Disc(BD)とHD DVDだが、さらに次世代を狙う光記録技術「ホログラム」も実用化に向けて着々と動き出している

 数100Gバイト以上という記録容量と100Mbps以上というデータ転送速度を実現する、まさに夢のようなテクノロジーであるが、実用化、とくに民生機器向けの展開については課題も残る。米InPhase Technologyと共同でホログラム記録技術の開発を進める日立マクセルに、ホログラム記録技術の現状と課題について尋ねた。

ホログラム記録の2つの問題

 「記録を立体的に行うことによって、大容量と高速アクセスを手に入れるというホログラム記録の原理自体は1950年代頃に見い出され、これをデータ記録に応用できるという考えは1970〜80年代から存在していましたが、実用化にはほど遠いと認識されていました。新たな記録素材の開発や、光学系技術の進歩によって実用化のめどがついてきたのは、ここ5〜6年のことなのです」(日立マクセル 情報メディア事業本部 ディスク製品事業グループ HMプロジェクト プロジェクトリーダー 今津龍也氏)

 今津氏が言うように、ホログラム記録技術という考え方自体はそう目新しいものではなく(ホログラム記録技術の基本的な原理・解説はこちらを参照のこと)、研究開発も継続して行われてきた。実用化に向けての問題点は大きく分けてふたつ存在しており、ひとつは記録素材の問題、もうひとつは記録・再生に求められる精度をどう保つかという問題だ。

 記録素材については、「詳細は申し上げられませんが、すでにサンプルは完成しています」(今津氏)とある程度の完成をみたようだ。現在サンプルが完成しているのはフォトポリマー(感光性樹脂)と呼ばれる素材を利用したライトワンスタイプだが、リライタブルタイプについての素材も研究されている。

photo 日立マクセルが開発しているホログラムディスク。基板でフォトポリマーを上下にサンドイッチする形状になっている

 もうひとつの問題、精度の保持についてはホログラム記録技術について確認をしておく必要がある。CDやDVDは記録する際のビットを微細化し、面あたりの記録密度を高めることで大容量化を図ってきたが、ホログラム記録ではデータを3次元的な「塊」として記録する。

 記録時には、波長のそろった2つのレーザー光(参照光とデータ光)を重ね合わせた時に発生する光の干渉パターン(干渉縞)を、屈折率の強弱という形でメディアへ3次元的に生成する。再生時には参照光をメディアに投射し、干渉縞で回折された光のパターンを読み取ることで再生を行う。

 2つのレーザー光を利用して干渉縞を生成し、データを重ね書き(多重記録)することで記録容量の増大を図るというのがホログラム記録技術の特徴だ。「まずは200Gバイト」(今津氏)という大容量を実現するが、2つのレーザー光を利用するために、記録・再生のいずれにおいてもレーザー光の精度が求められる(光が正しくメディアに当たらないと、干渉縞自体の生成・読み出しができなくなるため)。外からの振動がメディアに伝わろうものなら、記録も再生もままならない。

 この問題を解決するために、オプトウエアは参照光とデータ光を同一軸上から照射する「コリニアテクノロジー」を開発、光学サーボ制御などもあわせて導入することで除振装置も不要にした。

 コリニアテクノロジーで利用されている参照光とデータ光を同一軸上から照射する方式は「シフト多重」とも呼べる方式で、ディスクを常に回転させることで多重記録を行う。一方、日立マクセルがInPhaseと開発している方式は「角度多重」と呼べる方式で、記録時の参照光投射角度を変えることで多重記録を行う。

 「参照光の角度を変えるという方式を採用しているので、記録・再生時にはディスクは停止しています。さらにいえば、記録・再生を行うメディアの座標が正確に分かればいいだけなので、円形メディアである必要もありません」(今津氏)

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