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» 2005年04月15日 20時42分 UPDATE

缶も麻雀パイもリアル――東芝が“平置き型”の裸眼立体ディスプレイを開発

東芝は4月15日、特別なメガネなどを使用せずに立体視が可能になる“裸眼立体視ディスプレイ技術”を発表した。机など、水平に置いた画面を使う“平置き”タイプ。主にアーケードゲームや教育展示などの用途を想定している。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 東芝は4月15日、机など水平に置いた画面で立体的な映像を表示できる“裸眼立体視ディスプレイ技術”を発表した。発表した技術は「インテグラルイメージング方式」と呼ばれるもので、裸眼立体視技術としてはメジャーな「レンチキュラ方式」をベースに、視差数を増やして視野角の拡大と画質面の向上を図った。主にアーケードゲームや教育展示などの用途を想定し、2年以内の製品化を目指す。

photo 実際にデモンストレーション用の3Dゲーム画面を斜め方向から見下ろすと、ディスプレイ面をちょうど中間にして、浮き出して見える部分と沈み込んで見える部分があった。動画もスムーズ
photo 公開した試作機は、24インチと15.4インチの2種類で、写真は15.4インチの「家庭用試作機」。DVIインタフェースを持ち、通常のWindows PCに接続可能

 多くの企業が取り組んでいる裸眼立体視だが、ほとんどの場合はテレビなどと同じ横置きタイプで、“平置き型”はあまり例がない。東芝研究開発センターヒューマンセントリックラボラトリーの平山雄三主任研究員は、あえて平置きタイプを開発した理由について、「裸眼立体ディスプレイは、最終的に家庭に入ることを目指すものだ。しかし、縦置きシステムは登場から数年が経っても普及の兆しは見えない。従来とは一線を画すアプローチが必要だ」と説明する。

 「縦置きの立体ディスプレイの場合は、人は無意識のうちにディスプレイを“窓”に見たててしまい、“ディスプレイの向こう側には無限の空間がある”という先入観にとらわれる。しかし現状では、数センチの奥行きしか表現できず、結果としてリアリティを失ってしまう」(平山氏)。一方、平置きタイプでは、「見た人が、箱庭やジオラマ模型を見ているような感覚になり、リアリティを感じやすい」という。

photo 麻雀ゲームの例(手に持っているのはホンモノの麻雀パイ)。平置きのメリットを感じるアプリケーションだ

秘密はカマボコ型のレンズアレイ

 レンチキュラ方式では、ディスプレイ表面にカマボコ型の微少なレンズアレイを配置し、光の進行方向をコントロールする。ソース画像を縦方向に裁断(インターリーブ)した状態でレンズの下にある画素に配置すると、レンズからは多方向に光が出て、空間に立体映像を結像させる仕組みだ。光学的に“実像”を作る方式のため、「目の負担を軽減し、長時間の視聴にも向いている」。

 映像ソースには、16方向から撮影した平面画像もしくは相当するCGデータを使用する(16視差)。視差数が少ないと立体視できるな範囲が狭かったり、見る位置によって3D映像が不自然に切り換わるといった問題が生じるが、今回は正面から左右30度程度の範囲であれば、どこからでも自然な立体映像を見ることができる。横から見ても像は歪まず、顔を動かすと表示した物体の側面が見えてくる。

photo 立体表示の仕組み。実写コンテンツの場合、一定間隔で並んだカメラ16台で撮影する必要がある

 液晶ディスプレイは、1920×1080ピクセルの解像度を持つ低温ポリシリコン液晶ディスプレイ(24インチ)を使用。これに正面(真上)から見て縦方向にカマボコ型レンズが並ぶ形で、薄い「レンチキュラフィルム」を一体化させた。一本のカマボコは幅600ミクロンほどで、およそ12画素に1本という細かさだ。さらに、液晶ディスプレイのRGB画素配列を最適化し、水平方向の解像度を従来の約3倍に高めた。これにより、立体視の際にも「480×300ピクセルの“SDTV並み”の解像度」を実現した。

photo 右下の缶だけはホンモノ。写真では立体感がわからないが、実際にみるとかなりリアルだ

 「技術的には、PCモニターと同レベルに解像度を上げることも可能だ。しかし3D映像の場合、解像度、視差数、奥行き感がそれぞれトレードオフになる。逆に視差数を100程度まで増やせば“かなりリアル”な立体視が可能になるが、解像度は減るだろう」(同氏)

 3Dコンテンツの作成や再生は、一般的なWindows PCで実行できる。同社は、専用のコンテンツ作成ソフトウェアとグラフィックスカード用ミドルウェアを開発済み。製品化の際にはディスプレイだけでなく、ソフトウェアを含めたトータルソリューションとして提供することも検討している。ただし、製品化時のコストに関しては「まだ出せない状況だ」。


 東芝では今後、タッチパネルと組み合わせる技術などを開発してビデオゲームとの親和性を高めると同時に、飲食店の“バーチャルメニュー”や博物館などの道案内、あるいは電子書籍など、幅広いアプリケーションを検討していく。このため、立体映像に興味を持つ店舗やクリエイターを対象とするモニターテストを実施する計画だ。評価機は、15.4インチサイズの“家庭用試作機”。これを20台以上配布するという。

photo 博物館のアプリケーション例

 なお、4月20日から東京ビッグサイトで開催される「第1回 国際フラットパネルディスプレイ展」(Display 2005)にも、今回の試作品を出展する予定だ。

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