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「目が疲れない」「簡単お手軽」〜最新の3D映像技術CEATEC JAPAN 2004

» 2004年10月07日 00時17分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 「CEATEC JAPAN 2004」の展示会場では、実にさまざまなジャンルの最新技術を見ることができる。中でも今年のトレンドと言えそうなのが、映像に立体感を与える立体視変換技術だ。別記事で取りあげたシャープの「裸眼立体視ディスプレイ」やパイオニアの「3D floating vision」のほかにも、ユニークなものが数多く展示されている。その一部を紹介しよう。

もう目は疲れません〜NTT

photo NTTが開発した「眼鏡なし立体表示装置」(写真ではよくわからないが、立体的にみえる)。テレビ型や携帯電話向けなど、数種類の3Dディスプレイを展示している

 NTTブースでは、液晶パネルを2枚重ねにした裸眼立体視ディスプレイを展示している。NTTが発見したという新しい立体錯視現象を応用したもので、画面の中に“奥行き”を感じるタイプの3Dディスプレイだ。「人間の目は、明るさの異なる2次元画像を重ねると、奥行きがあるように錯覚する。その立体錯視現象を利用した」(同社)。

photo 立体錯視現象の原理。前後像の明るさの割合を変化させると、任意の奥行き位置を表現できるという

 一緒に展示されている模型(下)を見ると、その仕組みがよく理解できる。たとえば自動車の2D画像を立体化する場合、1枚目の液晶画面(手前側)では車のフロント部分を濃く表示し、2枚目(奥側)では薄くする。逆に奥行きを見せたいリア部分は2枚目のほうを濃くする。これを正面から重ねて見ると、フロント部は手前側、リア部分は奥側の画面が目に入ることになり、なるほど自動車が立体的にみえてくる。

photo 模型

 「重ねる映像は同一のため、解像度が減らないというメリットがある。また特別な眼鏡も必要なく、目に負担をかけずに自然な3D映像を長時間楽しめる」(同社)。

 ただし、この方式では事前に2つの映像データを用意しておく必要があり、汎用的とはいえない。このためNTTでは、3D映像を容易に作成できるCGベースの機器に同技術を展開する考えだ。たとえば、パチスロ台やゲーム機などのアミューズメント機器、あるいは携帯電話やカーナビがターゲットになるという。

普通のテレビが立体テレビに

 一方、マクニカとマーキュリーシステムが6日に発表したSTB(セットトップボックス)は、かなり汎用的だ。このボックスを通すと、普段見ているテレビ放送やDVDビデオなどがすべて立体映像になってしまう。しかもリアルタイムで。

photo マクニカとマーキュリーシステムが6日に発表したSTB(セットトップボックス)

 マーキュリーシステムといえば、シャープの3D携帯電話などで知られる立体視技術の開発元。映像のリアルタイム処理も手がけており、今回はそれを専用IC化することに成功したという。

photo 新開発の3D変換専用ICの仕組み

 マーキュリーシステムは、この専用ICをマクニカに供給し、共同でSTBの試作機を開発した。STBは、NTSC入力したソースを毎秒30フレームのスピードで立体視化できる。しかも量産品では、アナグリフ(赤青めがね)、偏光眼鏡、シャッター眼鏡、縦スリットなど、視差を利用した各種の3D映像フォーマットに出力可能になるという。もちろん、シャープや三洋の裸眼液晶モニターにも対応できる。

 「3D映像が市民権を得ていないのは、コンテンツが少ないからだ。また、製作側もステレオカメラを用いて撮影しなければならず、特定用途向けに特定のコンテンツを作っているだけ。しかし今回は、普通に撮影したものが簡単に、誰にでも3D化できるようになった」(マーキュリーシステムの江良一成社長)。

 STBの出荷は2005年3月の予定。量産機は、220(幅)×180(奥行き)×50(高さ)ミリのサイズで、コンポジットビデオ、S端子、DVIの出力端子を備える。まずは業務用として一台20万円で販売する計画だ。

 「今後はハードIPやASIC化による技術提供にも取り組んでいく。将来的には、既存の3Dシアター向け映像変換受託、ネット上の変換サービス、ダウンロードサービスなどのビジネス展開も視野に入れていきたい」(同氏)。

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