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ケーブルテレビに見る“放送網とIP網の未来”小寺信良(1/3 ページ)

» 2005年06月20日 14時22分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 先週6月15日から17日の3日間、東京国際展示場にて「ケーブルテレビ2005」というイベントが行なわれた。毎年恒例のイベントではあるが、今年はケーブルテレビ誕生50周年ということで記念展示なども行なわれており、なかなかのにぎわいを見せた。

 日本のCATVというのは、難視聴対策の一環としてスタートしたわけだが、その役割はこの50年の間に大きく変質している。特に近年では、CATVがADSLと並んで、一般家庭へのブロードバンド普及の一翼を担う存在となったことはご記憶だろう。FTTHからVDSLというラインまで含めても、日本のブロードバンドは現在のところ、電話線orアンテナ線の選択である、と言えるかもしれない。

 今回は「ケーブルテレビ2005」の会場で垣間見た、「放送+IP」の可能性を考えてみたい。

万能窓口としてのSTB

 NECブースで展示されていたSTB「楽ビジョン」ことCM4700Tは、CATVのSTBを様々な情報の窓口と考えて、「テレビでなんでもゲット」を目指すというものだ。具体的には従来のCATVチューナーの機能にケーブルモデムを内蔵し、さらにICカードスロットやUSBポートなどを設けた製品である。

photo NECの「楽ビジョン」ことCM4700T

 一見すると、2つの製品が合体して場所を取らないといった利便性を想像するが、実際には放送とIPの融合を、情報サービスという形にしてみせた製品である。この楽ビジョンを接続したテレビ画面では、番組の視聴は当然として、XMLやHTMLのようなIP系の情報とテレビ番組を一つの画面内に構成し、地域情報の発信や関連情報の引き出しを行なうのである。

photo 楽ビジョンのサンプル画面。ティッカーも実装している

 デジタル放送でもそのようなことをやろうとしているが、楽ビジョンはそのデータ放送部分を、足回りのいいIPを使ってやろうというわけだ。XMLやHTMLの自動生成ツールもNECが開発し、CATV側ではブラウザ上のテンプレートに必要事項を埋めていくだけで、すぐに情報発信ができる。マスメディアがマスの情報しか流せないのに対し、CATVはマスの番組を流しながら、同時に地域密着のミニの情報も流すことができるのもメリットだ。

 また地方では自治体との関連が多いということで、ICカードスロットの一例として住民基本台帳カード(住基カード)のスロットを設けた。住基カードを含め住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)自体の必要性に関しては依然として議論を残すところではあるが、とりあえず自治体のサービスを受ける際に、個人認証の一つの方法として考えているようだ。

 また、放送以上に期待される新映像ビジネスである「VOD」に一番近いのも、CATVだ。番組配信は映像回線で、ブラウジングはWEBでと使い分ければ、やみくもにブロードバンドにこだわる必要もなくなる。広くICカードスロットとしての利用を考えると、クレジットカードを突っ込んでVODの決済をその場で行なうということも、考えられるだろう。

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