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ケーブルテレビに見る“放送網とIP網の未来”小寺信良(2/3 ページ)

» 2005年06月20日 14時22分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 現在ネット上では、カードナンバーと有効期限、登録氏名がわかれば、それだけで買い物ができてしまう。このオンラインショッピングをテレビに移行した場合、ユーザー側からの情報入力だけに頼ったシステムというのは、不安が残る。例えばテレビでのショッピング画面ともなれば、場合によっては向かいの家からでもはっきり見えるぐらいの大型テレビであったりするわけだ。IDなりパスワードなりはあるにしても、その場に物理的にクレジットカードが必要というほうが、安全な面もあるのではないだろうか。

 決済に関しては例えば携帯電話の使用料のように、月ごとにコンテンツ利用料をCATVの料金と一緒にまとめて引き落とす方法もある。だがかつての携帯電話のように、利用額が青天井で月末に請求書を見てひっくり返るというのは、今の時代にはあまり好まれないだろう。それよりも他のオンラインショッピングと同じように、その場で少額決済したほうがいい。そういう意味では、別にクレジットカードにこだわるのではなく、地域通貨型のプリペイドカードや、スーパーマーケットのポイントカードなども利用できると、地域経済の活性化にもつながるだろう。

 もちろんこれはまだ、セキュリティなどの具体的な問題を置いといての話だが、ちょっと検討してみてもいいビジョンかもしれない。

高速引き込み回線としてのCATV

 既設の同軸ケーブルで物理速度250Mbpsを実現するというのが「c.LINK」。昨年のケーブルテレビ2004では松下電器産業ブースで参考出品されたが、いよいよ今年9月にも商品化されるようだ。

 ユーザー側から見れば、c.LINK用のケーブルモデムというのは、サイズも使い方も、従来のケーブルモデムと変わりない。単純に現状のモデムを置き換えるだけで済むだろう。

photo 松下が9月に商品化するc.LINK用のケーブルモデム

 一方サービスを提供するCATV側としては、必要最小限の設備としてc.LINKマスターモデムと、管理サーバが必要になる。写真内の赤で囲った装置が、c.LINKマスターモデムだ。これが各家庭ごと、もしくは集合住宅であれば建物ごとに1つ必要になる。中央の大きなボックスは、光ファイバーから同軸へ変換する光ノードやc.LINKマスターモデムなどを全部一緒にしたもので、すでに既存のメディアコンバータなりが稼働している場合には必要ない。

photo c.LINKの接続概略図。赤で囲ったのがマスターモデム

 既存のケーブルを利用する際にS/Nが問題になるが、マスターモデムから各ケーブルモデムの間で、50デシベルの減衰までは大丈夫だという。ただ主要幹線がまだ同軸の場合は、そこですでに20〜30デシベルぐらいは減衰してしまっている。さらにそこからあと50デシベルの余裕がある、というわけにはいくまい。基本的には、CATVの主要幹線がすでに光に置き換えられていることが、c.LINK導入の前提になる。

 c.LINKの普及を押し上げるのは、Bフレッツなど電話回線系商品との競争だ。すでに集合住宅では、FTTHの引き込みが終わっているところも少なからずあるわけだが、実際に各部屋に引き込まれるのは、既存の電話線を利用したVDSLとなるのが現状だ。ところがVDSLでは、下りが最高で52Mbps、上りが2Mbps程度にまで落ちてしまう。下りはいいとしても、例えば仕事でデカいファイルをアップする必要がある人からすれば、ここまで極端に非対称だと使いにくい。

 c.LINKはそれより後発となってしまうものの、実効速度で最高130Mbpsが実現できるという。これが実地でも対称で70〜80Mbps程度出るのであれば、CATVのFTTBからだけでなく、FTTHから各家庭への引き込み方式として、VDSLに取って代わる可能性もある。

 もちろんNTTが直接やっているBフレッツではあり得ないかもしれないが、最近は回線だけNTTから借りて、各家庭への引き込みは有線ブロードネットワークスなどの別会社が事業を行なっている例もある。こういうビジネスモデルで、引き込み線の方式をユーザーが選択できるとすれば、また新しい展開が期待できるかもしれない。

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