6月15日、東京ビッグサイトで「ケーブルテレビ 2005」が開幕した。今年は日本でケーブルテレビが誕生してから50年という節目を迎えたこともあり、共同出展を含めて165の企業が参加。過去半世紀を振り返る企画展示はもちろん、各社の展示ブースにも力が入っている。
展示会場は、メーカーやSIが中心の「ハードウェアゾーン」と放送番組を供給するコンテンツサプライヤーが出展する「サプライヤーゾーン」に分かれ、それぞれ全く異なる趣を見せる。サプライヤーゾーンでは、巨大なゴジラが現れたかと思えば、説明員が全員ライトセーバーを持っているブースあり、バニーガールがチラシを配っているブースありと、例年通りのお祭り騒ぎだ。
一方のハードウェアゾーンは、派手さはないものの、新製品や参考展示が注目を集めている。中でも目立つのは、IPベースの情報サービスを取り込んだセットトップボックス(STB)。日本ケーブルラボのデジタルケーブルテレビ双方向運用仕様「JCL SPEC-010/011(暫定版)」が策定されたことで、メーカー各社はDOCSISモデム内蔵のSTBに力を入れている。
たとえばマスプロ電工は、2005年末に出荷予定のデジタルSTB「DST-52」シリーズを参考出品した。放送サービスの仕様に合わせて4モデルをラインアップしており、このうち2モデルにケーブルモデムを内蔵。もちろんRFリターンのPPVサービスにも対応している。また、家電向けのWebブラウザ「NetFront DTV Profile」を搭載したため、Webサイトをテレビで閲覧することも可能だ(残りの2モデルは外付けケーブルモデムで対応)。
これにあわせ、情報サイトを簡単に作成できるツールを開発。blogツールのように、枠の中に文章を入力していくだけで、定型フォーム通りのHTMLを作成してくれる。
パイオニアが出展したデジタルSTB「BD-V300」シリーズは、ケーブルモデムにくわえてブリッジを内蔵した。STBの背面にイーサネットポートがあり、ここにLANケーブルでPCをつなぐとインターネット接続が可能になる仕組みだ。ただし、「内蔵モデムは(1世代前の)DOCSIS 1.1仕様のため、最新のケーブルモデムに比べると速度は落ちる」(同社)。
J-COMブースでは、今年1月に開始したVoDサービス「J-COM オン・デマンド」を大々的にアピール。実際に練馬の放送センターと接続し、VoDを体験できるようになっている。
使用するSTBは、松下電器産業の「TZ-DCH1000」および「TZ-DCH500」。VoDや「Tナビ」などの双方向サービスに注力していることもあり、松下は自社ブースでも新製品を大々的に展示していた。
しかし、展示会場を見回してみると、意外にもVoDに対して慎重なメーカーやシステムベンダーが多いことに気がつく。実は、パイオニアやマスプロ電工が出品した新しいSTBもVoDに対応するスペックを持っているのだが、カタログや展示パネルを見ると「VoD」の文字は見あたらない。
理由を尋ねると、「ハードウェア的にはVoDも可能だが、ソフトウェアを実装していないため、今回は展示しなかった」(パイオニア)。マスプロ電工は、「VoDのクライアントソフトさえ載せれば対応できるが、それは製品出荷後になるだろう」と話していた。市場性を考えると、“VoD対応”を謳うには時期尚早という判断だ。
「CATV局は、潤沢な資金を持つところばかりではない。とくに、これから地上デジタル放送が始まる地方では、デジタル放送サービスへの移行を進める方が先だ」(マスプロ電工)。
このほか、VoDコンテンツの使用料金がDVDレンタルに比べて高めに設定されていることや、不正コピー防止の仕組みが確立していないという背景もあるようだ。ハリウッドを中心とする米国のコンテンツホルダーが、エンクリプション(暗号化技術)の採用を求めているのは周知の通り。こうした要求に対し、国内では暗号化とともに既にあるC-CAS(Conditional Access System:CATV用の限定受信システム)を利用することも検討されているが、先行してVoD サービスを始めたJ-COMは、暗号化やC-CASを使用していない。
このためVoDサービスでは、近い将来、2つの仕様が混在する可能性もあるという。CATVのインフラ構築を手がけるブロードネット マックスでは、「STBメーカーやCATV事業者は、VoDサービスを開始したあとで状況が変わり、仕様変更の必要が生じるといった懸念を持っている。状況を見極めるため、当面は“様子見”になるかもしれない」と話していた。
ケーブルテレビ 2005の会期は、6月17日金曜日まで。入場は無料だ。
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