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本格化するCATVの双方向サービス――でも“VoD”は様子見ムード?ケーブルテレビ 2005

» 2005年06月16日 07時05分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 6月15日、東京ビッグサイトで「ケーブルテレビ 2005」が開幕した。今年は日本でケーブルテレビが誕生してから50年という節目を迎えたこともあり、共同出展を含めて165の企業が参加。過去半世紀を振り返る企画展示はもちろん、各社の展示ブースにも力が入っている。

photo 「ケーブルテレビ2005」。サプライヤーゾーンはお祭り騒ぎ

 展示会場は、メーカーやSIが中心の「ハードウェアゾーン」と放送番組を供給するコンテンツサプライヤーが出展する「サプライヤーゾーン」に分かれ、それぞれ全く異なる趣を見せる。サプライヤーゾーンでは、巨大なゴジラが現れたかと思えば、説明員が全員ライトセーバーを持っているブースあり、バニーガールがチラシを配っているブースありと、例年通りのお祭り騒ぎだ。

photo 「できるかな?」のゴン太君も会場内を徘徊し、来場者に愛想を振りまく

 一方のハードウェアゾーンは、派手さはないものの、新製品や参考展示が注目を集めている。中でも目立つのは、IPベースの情報サービスを取り込んだセットトップボックス(STB)。日本ケーブルラボのデジタルケーブルテレビ双方向運用仕様「JCL SPEC-010/011(暫定版)」が策定されたことで、メーカー各社はDOCSISモデム内蔵のSTBに力を入れている。

 たとえばマスプロ電工は、2005年末に出荷予定のデジタルSTB「DST-52」シリーズを参考出品した。放送サービスの仕様に合わせて4モデルをラインアップしており、このうち2モデルにケーブルモデムを内蔵。もちろんRFリターンのPPVサービスにも対応している。また、家電向けのWebブラウザ「NetFront DTV Profile」を搭載したため、Webサイトをテレビで閲覧することも可能だ(残りの2モデルは外付けケーブルモデムで対応)。

 これにあわせ、情報サイトを簡単に作成できるツールを開発。blogツールのように、枠の中に文章を入力していくだけで、定型フォーム通りのHTMLを作成してくれる。

photo 従来機の「DST22」と比較して約25%の小型化を果たした「DST-52」。D4端子やAAC 5.1ch出力が可能な光デジタル出力を持つ。新しいEPGやズーム機能(画面拡大)も備えた
photo 文章を入力していくだけでCATV局オリジナルの情報ページができあがるツール

 パイオニアが出展したデジタルSTB「BD-V300」シリーズは、ケーブルモデムにくわえてブリッジを内蔵した。STBの背面にイーサネットポートがあり、ここにLANケーブルでPCをつなぐとインターネット接続が可能になる仕組みだ。ただし、「内蔵モデムは(1世代前の)DOCSIS 1.1仕様のため、最新のケーブルモデムに比べると速度は落ちる」(同社)。

photo 「V300」シリーズは、HDMI端子を備えているのも特徴。名古屋のスターキャット・ケーブルネットワークなどが採用している
photo BD-V300シリーズの新GUI。EPGでは、地上波/BS/専門チャンネルの各デジタル放送をシームレスに扱える

 J-COMブースでは、今年1月に開始したVoDサービス「J-COM オン・デマンド」を大々的にアピール。実際に練馬の放送センターと接続し、VoDを体験できるようになっている。

photo 約2000タイトルを揃える「J-COM オン・デマンド」。映像の解像度はD1。約3.6MbpsのMPEG-2 TS(Transport Stream)で伝送する仕組みだ。カラオケも用意している

 使用するSTBは、松下電器産業の「TZ-DCH1000」および「TZ-DCH500」。VoDや「Tナビ」などの双方向サービスに注力していることもあり、松下は自社ブースでも新製品を大々的に展示していた。

VoDは様子見ムード?

 しかし、展示会場を見回してみると、意外にもVoDに対して慎重なメーカーやシステムベンダーが多いことに気がつく。実は、パイオニアやマスプロ電工が出品した新しいSTBもVoDに対応するスペックを持っているのだが、カタログや展示パネルを見ると「VoD」の文字は見あたらない。

photo パイオニア「BD-V370」のリモコンには「VoD」ボタンが付いている

 理由を尋ねると、「ハードウェア的にはVoDも可能だが、ソフトウェアを実装していないため、今回は展示しなかった」(パイオニア)。マスプロ電工は、「VoDのクライアントソフトさえ載せれば対応できるが、それは製品出荷後になるだろう」と話していた。市場性を考えると、“VoD対応”を謳うには時期尚早という判断だ。

 「CATV局は、潤沢な資金を持つところばかりではない。とくに、これから地上デジタル放送が始まる地方では、デジタル放送サービスへの移行を進める方が先だ」(マスプロ電工)。

 このほか、VoDコンテンツの使用料金がDVDレンタルに比べて高めに設定されていることや、不正コピー防止の仕組みが確立していないという背景もあるようだ。ハリウッドを中心とする米国のコンテンツホルダーが、エンクリプション(暗号化技術)の採用を求めているのは周知の通り。こうした要求に対し、国内では暗号化とともに既にあるC-CAS(Conditional Access System:CATV用の限定受信システム)を利用することも検討されているが、先行してVoD サービスを始めたJ-COMは、暗号化やC-CASを使用していない。

 このためVoDサービスでは、近い将来、2つの仕様が混在する可能性もあるという。CATVのインフラ構築を手がけるブロードネット マックスでは、「STBメーカーやCATV事業者は、VoDサービスを開始したあとで状況が変わり、仕様変更の必要が生じるといった懸念を持っている。状況を見極めるため、当面は“様子見”になるかもしれない」と話していた。


 ケーブルテレビ 2005の会期は、6月17日金曜日まで。入場は無料だ。

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