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» 2005年06月28日 23時16分 UPDATE

インタビューBD-Rのコストは本当に高い? (1/3)

次世代DVD統一交渉の決裂後、各社はそれぞれ開発を再スタート。東芝は来年3月に2層30GバイトHD DVD-Rを投入する。“メディア単価”で有利とアピールする東芝側だが、一方のBD-Rは本当にコスト高なのだろうか? ソニー担当者に聞いた。

[本田雅一,ITmedia]

 次世代DVD統一交渉の決裂後、各社はそれぞれの路線で、次世代DVDの製品化に向けて動き始めた。

 その中で東芝は藤井氏のインタビューにもあるように、来年3月に予定しているレコーダー新製品においてHD DVD-Rの2層30Gバイトディスクを目玉に据えようとしているようだ。

 HD DVD-Rの2層ディスクは、現在のところDVD Forumでの規格も存在しない状況だが、CDやDVDの世界ではCD-R/DVD-Rが実利用環境の中心になっていることから、一度だけ記録可能なライトワンスメディアがHD DVD-Rでも主流になると判断。また東芝関係者は一様に「HD DVD-RはDVDと同様の手順で作れるが、BD-Rは新たに製造ノウハウを構築しなければならない。“メディア単価”で我々の方が有利」と話す。

 東芝が来年の3月に2層HD DVD-Rドライブを間に合わせることが可能なのか? 現時点では試作品もないため、判断するための材料はない。

 しかし、もし間に合うと仮定し、さらに2層ライトワンスメディアのそれもコストが安くなるのであれば、十分に魅力的だと感じるユーザーもいるだろう。記録時間の面でも30Gバイトあれば十分という議論が起こるかもしれない。

 ではBD-Rのコストは本当に高いのだろうか?

 

BD-Rがコスト高と言われる理由

 BD-Rがコスト高と言われている理由は、色素を用いたライトワンスメディアを製造する行程が、CD-RやDVD-Rとは異なるためだと、東芝側(HD DVD推進室長の佐藤裕治氏)は説明する。

 通常のDVD-Rは、グルーブ(溝)を掘ったカバー層の裏面に色素をスピンコートで塗り拡げた後、反射層を蒸着させて作られる。これは基本的にCD-Rでも同じであり、長い間培われてきた枯れた技術だ。

 しかしBDの場合、保護層が0.1ミリと薄いため、1.1ミリのディスク基盤に対して、従来の工法とは逆順にプロセスを施さなければならない。つまり、グルーブを刻んだディスク基盤に反射層を蒸着し、その上に色素をスピンコートで塗り拡げる。東芝側の主張によると、この“逆積み”行程では、高品質のライトワンスメディアを安定して作ることが難しいという。

 先日、パイオニアと三菱化学メディアは、BD-Rでも有機色素が利用できるという研究開発成果を発表したが、BD-Rの立ち上げ時は色素のスピンコートではなく、相変化金属膜を蒸着させる事になるとも噂されている。

 「相変化のライトワンスメディアは以前にもあったが、色素を用いる方式に比べてコストを下げにくい。すでに確立されたDVD-Rメディアの生産技術を持ち込める我々が有利」(東芝・佐藤氏)

BD-RとCD-Rが大きく違うところ

 しかし、ソニー・ホームエレクトロニクス開発本部オプティカルシステム開発部門副部門長の小川博司氏と光システム開発部長の大里潔氏は、「おそらくBDA(Blu-ray Disc Association)内での議論が外には伝わっていないための誤解だろう」と話す。特にコスト面では「相変化でも色素並みに安価に作れるほか、さらに安価にできる可能性もある」(小川氏)と、東芝側とは全く逆の意見を述べる。

 この小川氏は、かつて実用化が不可能と言われたCD-R技術を、社内を説得しながら開発し続け、ついには実用化した「Mr.CD-R」として知られる技術者だ。その小川氏が「CDとBDでは大きく異なる点がある。それは、前提としている反射率が(BDの方が)はるかに低く、必要な変調幅も狭いこと」と説明するのだ。

 BDは元々、相変化記録の書き換え可能なディスクが最初に決められたという経緯がある。「技術的には最もハードルが高いところから始めた。反射率も変調幅も、従来よりずっと厳しい条件でも読めるように設計されている」(小川氏)

 CD-RやDVD-Rの場合、元々ROM型が先行してドライブ開発されていたところに、ライトワンスメディアを作ろうとした。このためROMの高い反射率と大きな変調幅を前提にしたドライブが最初に普及しており、後から登場する記録型メディアは、それら古いドライブでも読める高反射率と大きな変調幅を実現しなければならなかった。

 「CD-Rの難しさは100%の反射膜と深いピットから生まれる大きな変調幅を、記録型でも実現しなければならないところにあった。色素でグルーブを埋め、その色素を反応させる事で大きな変調幅を得るアイデアは、当時の太陽誘電が開発したもので、この技術が現在のDVD-Rでも使われている。しかし、その太陽誘電も、BDAの中では他に良い方法があるのではないか? といった議論を交わしている。色素を用いる最大のメリットはコストではなく、高反射率と大きな変調率にある。色素は安いというが、実はグラムあたりでは金よりも高い。前提条件が変われば、色素以外にもライトワンスメディアを作る選択肢はたくさんある」(小川氏)

 つまり、ROMから始まっているCDやDVDと、記録型から始まっているBDでは、そもそもの前提条件が異なり、BDにおいてはCD-RやDVD-Rの常識は当てはまらないというわけだ。

金属皮膜のライトワンスでも安価な理由

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