NTTドコモとのプロジェクト。現在、携帯電話のユーザーインタフェース(UI)設計は、かなり「勢い」で作ってしまっているんだそうだ。NTTの(感性の若い)社員が、紙の上で使いやすそうなUIをデザインして仕様書を書く。メーカーはその仕様書に沿って作成する。ここで変更が生じることはほとんどない。
でも、UIってのは「使ってみてわかることが多い」のだ。Suicaの読み取り機のUIデザインのときには山中さんは「実験してみないとわかりません」と答えている。そういうものなのだ。このようにして世に出た携帯は、一般ユーザーによって「実験」される。その結果は1年後くらいに「クレーム」という形でフィードバックされる。でも、そのころには携帯の要求仕様はもう変わってしまっているから、あんまりその結果は生かされない。
「誰が悪いってわけではないんですが、システムが悪いんです」という状態を打破しようとして、動き出したのがUIプロジェクトだ。簡単に言ってしまうとパソコン上で動く携帯電話UIエミュレータである。ハードウェアだけの試作機をこれにつなぐと、パソコン上にその携帯の画面が表示される。ここで設計したUIをパソコン上で実際に動かしてみることができるのだ。本当にそれが使いやすいのかどうか、試してみることができるというわけ。システムにはカメラもついていて、それをいじっている人の記録も取れるようになっている(会場のデモでは、プライバシー上の理由でこの機能は生きていない)。
「えと、いままで、そういうことをしていなかったんですか……」とおもわず聞いてしまったのだけど、どうもそういうことだったらしい。
これも田川さんによる。プロジェクターによって投影されているスクリーンに向かってレーザーポインターを振るうと、その軌跡が線となって描かれる。基本はそういうものだ。原理も簡単。プロジェクタのわきにあるカメラが輝点を検出しているのだ。
これに類したものはいくつか見たことがあるのだけど、強いレーザーを使わなければいけなかったり、照明条件が厳しかったりして、なかなか実用には達していないものが多かった。でも、Afterglowは、普通のレーザーポインタでいいし(赤でも緑でもいい)、照明条件も普通にプレゼンテーションができるようなところなら大丈夫。また、起動時にオートキャリブレーションを行うので、プロジェクタとスクリーンに角度がついていてもOK。カメラも必ずしもプロジェクタのわきにある必要はない。
画面の隅には引き出し式のツールボックスもあって、そこで、スライド送り戻しやペンの種類や色の設定と言ったこともできるようになっている*1。
また、「ユーザー」という概念があって、例えば赤いレーザーと緑のレーザーは別のユーザーとして、それぞれ独立に動かすこともできるようになっている。これは、ちょっといい。スクリーン上でコラボレーションができちゃうわけだ。
これを思いついたきっかけというのは、田川さんがインタラクション系のソフトの会合に出席したことなのだそうだ。プレゼンテーションを行うのはWebデザイナーだったりして、プレゼン画面はとってもインタラクティブでかっこいい。でも、それを行っている本人は、座ってパソコンの画面に向かってぼそぼそやってる。プレゼンテーターを含めたメタな風景はちっともインタラクティブじゃない。最初は、ちょっと皮肉っぽい気持ちで面白がっていたんだけど、そのうちに、これはツールがいけないんじゃないか? と思うようになった、というわけ *2。
「もしかすると、一番かっこいいプレゼンは、真っ白なスクリーンから初めて、そこにどんどん書いていくことかもしれませんね」
Afterglowは来年早々に製品化される予定なのだそうだ。またそのときに紹介することになるだろう。
以前リポートした「Hallucigenia 01」も展示されている。残念ながら実車化の目処はまだたってないそうだ。会場では動かしてみせてもくれるけど、フィールドには段差や傾斜は用意されていない。そういうところでも床面が水平を保つというのが大きなウリのはずなのに。
でも、「歩き」のモーションは追加されていた。
小走りになるところで、おおって声が上がってた。
*1 これは、おもしろいんだけど、実際のプレゼンテーション画面で引き出しが見えてたら、あれは何だろうって気になってしょうがないと思う。
*2 わたしは、この話を聞きながら、スティーブ・ジョブズのことを思い出していた。彼も、手の中のあのスイッチがなければ、あのプレゼンテーションはできないだろう。
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