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» 2006年01月10日 16時06分 UPDATE

2006 International CES:画質を改善するビデオプロセッサたち (1/2)

固定画素における映像処理の重要性は以前から叫ばれてきたが、パネルレベルでの画質が向上してくると、映像処理チップの優劣がハッキリしてくる。「2006 International CES」の会場で、北米を拠点にする映像処理チップメーカー2社のビデオプロセッサを取材した。

[本田雅一,ITmedia]

 本格的なフルHD時代を迎え、「2006 International CES」はどこも“フルHD”一色となった。もちろん、数だけでいえば市場の中心はいまだに720P以下の解像度だが、今後はフルHD対応製品がどんどん一般化することだろう。解像度やパネルレベルでの画質が向上してくると、今度は映像処理チップの優劣もハッキリと知覚できるようになってくるものだ。

 固定画素における映像処理の重要性は以前から叫ばれてきたが、ディスプレイデバイスそのものに比べると、消費者の関心は薄い。画質と映像処理エンジンの関係を最初に説き始めたのはソニーの「ベガエンジン」だった。画質はパネルではなく、ベガエンジンで決まる。それが当時からのソニーの主張だったのである。

 実際、映像処理エンジンは画質に大きな影響を与える。昨年末に掲載した東芝の「メタブレイン・プロ」は、映像処理だけでなくパネルドライバ、インタラクティブ機能やインターネットアクセス機能など、さまざまなデジタル処理を統合したエンジンだが、その中の映像処理回路の良さが同社Z1000シリーズの高画質へとつながっている。

 今後の技術開発でパネル間の性能差が縮まってくると、映像処理エンジンが再びフィーチャーアップされてくるだろう。圧縮ノイズの多いデジタル放送化の進行も、それを後押しするだろう。ところが、映像処置エンジンの核となるプロセッサに関しては、日本企業よりもシリコンバレー企業の方が積極的な開発を進めている。半導体技術の進歩により、以前よりも効率的な手法でビデオプロセッサの開発が可能になったためだ。北米を拠点にする映像処理チップメーカー2社のビデオプロセッサを取材してみた。

 シリコンオプティクスが昨年のCESで発表した「REALTA」は、業務用ビデオプロセッサを開発していたTERANEXの技術を1チップ化したビデオプロセッサだ。TERANEXは、1998年に1秒に1兆回の演算を行える並列型の映像処理プロセッサを発売。当時は6Uサイズの巨大なプロセッサで、価格も1台10万ドルというものだった。

 TERANEXの技術はこのプロセッサを用い、高品質のI/P変換やSDからHDへのアップコンバージョンなどの映像処理を行うもので、たとえばHD放送の一部にSD放送を挟み込む時などに利用する。日本でもNHKなどがTERANEXのプロセッサを導入しているという。

 6Uだったプロセッサは徐々に縮小され、2001年に3U、2003年に1Uまでスリム化するとともにコストダウンを勧め、2004年にはとうとう1チップ化した。その間、パフォーマンスは変化しておらず、その上で動作するソフトウェアも放送局やハリウッドの映像制作スタジオのニーズに応じることでブラッシュアップされてきた。

photo 1チップ化された「REALTA」

 同社はこれらの技術を「HQV」と呼んでいるが、これはHollywood Quality Videoの略だという。実際に業務用として使われている機器と同じパフォーマンス、同じプログラムをそのまま動かせることをアピールした名称だ。

 REALTAはその後、ヤマハのプロジェクター「DPX-1300」、デノンのDVDプレーヤー「DVD-A1XVA」(I/P変換部)などに使われているほか、欧州ではビデオプロセッサ単体での発売もされているようだ。

photo デノンのDVDプレーヤー「DVD-A1XVA」(左)とヤマハのプロジェクター「DPX-1300」

 REALTAのアップコンバージョンは1024タップのスペックで、単純に拡大するだけでなく、レンズの歪曲収差を取ったり、ほとんど画質を落とさないままキーストン補正を行うといた機能も持つ。SDからのアップコンバートだけでなく、1080iソースを720P機器に表示する際にも、ボケ感のない精細な映像を生み出す。

 さらに各種MPEGノイズの除去機能を備えており、とくにモスキートノイズやブロックノイズは精細感を損なわないまま、ほとんど目立たないレベルまでノイズを下げることに成功していた。デモは「DirecTV」の低ビットレートSD映像に対して行っていたが、能力的にはHD映像に対しても全く同じ処理を行えるという。地上デジタル放送をはじめ、圧縮ノイズが目立つソースに対しては効果がありそうだ。

 REALTAの機能は組み合わせるメモリ容量によって変化するが、チップそのもののコストは「ファロージャDCDiと置き換えることが可能な程度」と話しており、(ロット単価は非公開だが)さほどハイコストというわけではないようだ。

 たとえば東芝の480P対応DLP「TDP-ET20」は、1499ドルのローエンドプロジェクタだがREALTAを内蔵している。このプロジェクターは1メートルで100インチ前後の投影が可能な超単焦点レンズを採用しており、歪曲収差が大きく出るが、これをREALTAの演算により補正している。

 REALTAは完全にプログラマブルなプロセッサであり、ソフトウェアの変更で機能やクオリティが変化するほか、今後は演算速度そのものをさらに向上させる計画を持っている。また、日本でREALTAを採用したビデオプロセッサの発売に興味を持っているディストリビュータもあるようだ。

 HD I/P変換の映像も非常にクリア。ピクセル単位で処理を行っているため、シネスコ画面で映像部分だけを2-3プルダウンし、字幕部分は動き適応型I/Pで処理することも可能だという。

アンカーベイのアプローチ

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