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Web2.0の中味と外側小寺信良(2/3 ページ)

» 2006年05月29日 09時48分 公開
[小寺信良,ITmedia]

Web2.0的なサービスとは

 ではWeb2.0の外側に、どのような仕組みが生まれるのだろうか。想像を交えて考えてみよう。

 現時点では、様々なサービスは独立した形態を保っている。ブログは基本的に各個人の持ち物だし、SNSは限られたメンバー間のコミュニティを形成する。Amazonやヨドバシ・ドットコムは独立した物販業者だし、楽天は小売店を束ねることで全体として独立した巨大ショップであるかのような体裁を取ることで成功した。

 例えばこれらが横につながっていくと想像したらどうだろう。SNSの大手mixiでは最近、iTunesと連携して音楽再生リストを共有するという機能を発表した。

 プレイリストを公開することでコミュニケーションを促進し、またそこから「iTunes」や「Amazon.co.jp」の楽曲販売サイトに飛べる。個人の差し障りのない情報を取り込み、そこにほかのサービスと接続していくという姿である。

 これは一見、別サービスとの連携と見られるかもしれないが、見方を変えれば1つのサービスの肥大化と見ることもできる。例えばプレイリストを共有するコミュニティとしては、PLAYLOGの方が早い。

 プレイリストによる共通性を見つけ出し、コミュニティを形成させ、レビューを採用し、楽曲販売に結びつけるというやり方は、うまく回転すれば劇的な効果をもたらしただろう。だがPLAYLOGに欠けているものは、圧倒的な利用者の絶対数だ。こればかりは口を開けて待っているだけで、そう簡単に集まるものではない。

 つまり新しいSNSサービスに加入するということは、人間関係をまた1からやり直しなのである。初めてのSNSがこれなら楽しいかもしれないが、ほかのSNSに参加していると、労力を分散しなければならなくなる。そこが辛いところだ。

 例えば人間関係の情報を、ほかのサービスに持ち込めたら便利かもしれない。例えばmixiでマイミクな関係の人とは、別のコミュニティに行ったら自動的にメンバーが検索され、友好関係者として登録されるというようなシステムだ。

 だが逆に、別のコミュニティで違った人間関係を築きたいと思っている人にとっては、不幸である。人間関係も一つの個人情報には違いない。当然その管理は、自分自身が自由に制御できなければならない。

 “別サービスとのシームレスな連携”の限界は、このあたりにあるのではないだろうか。つまりいくら連携するとはいっても、システムや会社組織としては別のものであり、要はヒトとモノをリンクで結ぶ手段にしか過ぎない。mixiからワンクリックで販売サイトにジャンプできるが、ワンクリックで購入できるわけではないのである。

 今のところそれをやるには、mixiが楽曲販売機能を内包するしかない。するとAmazonにとっては、「今日の友が明日の敵」になるわけである。だが楽曲販売機能を、Amazonがmixiに提供するとしたらどうだろう。つまりAmazonがmixi内出張所をつくるわけである。

 このような方向で考えていくと、各サービスがシームレスにつながるとは、文字通り現在の状態を保ったままで平行につながるというのではなく、お互いがお互いを内包し合うという入れ子構造になるというのが妥当な線なのではないかという気がする。そしてそこまでやれるのであれば、Web2.0的と言っていいかもしれない。

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