コラム
» 2006年05月29日 09時48分 UPDATE

小寺信良:Web2.0の中味と外側 (1/3)

Web2.0が人々を虜にしている。Web2.0が何かという問いは、その中味ではなく、その外側に対して発せられなければならない。次世代のビジネスモデルが見え隠れするWeb2.0の潜在的な魔力とは?

[小寺信良,ITmedia]

 少し思い出話をしよう。筆者の実家では、祖父母が酒屋を営んでいた。酒屋とはいうが酒だけを扱っていたわけではなく、タバコや切手、果物、駄菓子、洗剤など、生活に必要なものはなんでも扱っていた。今で言えば、和風コンビニといったところか。

 筆者が小さい頃は今のように、お菓子はすべてパッケージングされていたわけではない。もちろんキャラメルなどは当時から箱に入っていたが、あられやせんべいのようないわゆる米菓は、ガラスのフタの付いた、大きな平台のケースに入れられ、量り売りだったものである。

 この量り売りというのは、考えようによっては非常に優れたシステムであった。今でもスーパーの精肉売り場あたりでは量り売りもあるが、これはグラム単位で値段が決まる。しかし昔の駄菓子の量り売りというのは、10円分とか50円分でどれだけ、という売り方なのである。つまり最初から必要な量がわかっているわけではなく、わかっているのは自分の懐具合だけだ。

 このやり方は、貧富の差が確実に目に見えるような時代には優しい。子供らは今日のお小遣いである10円玉や50円玉を握りしめて、これで買えるだけのお菓子をください、とやってくるのである。売る方も一応量りにはかけるものの、厳密に1グラム単位で増減するわけではない。目分量で量ってだいたい合ってたら、それで売ってしまう。

 今で言えば接客係であったうちのばあちゃんは、顔なじみになれば多少オマケし、初めてのお客にはサービスでオマケし、結局誰にでもオマケしていたものである。だがそれが口コミで評判になり、学校が終わったあとは、子供たちが大挙して押しかけることになる。

Web2.0に中味はない

 「Web2.0」というキーワードは、それが提唱された昨年よりは若干落ち着いて扱われるようになってきたかな、という印象を持っている。インターネットの各用語集サイトにも、一応それらしい解説付きでキーワード登録されており、「Web2.0って何?」という疑問には答えられるようになっている。

 だがそれを象徴するものは何かと言えば、すでに存在する技術であったりサービスであったりする。中味をのぞいてみれば、新しいものは何もない。つまりWeb2.0が何かという問いは、その中味に対してではなく、その外側に対して発せられなければならないのである。

 この問いが、単純に次世代のインターネットのあり方を差すだけであれば、ここまで大騒ぎにならない。誰もが懸命に答えを模索する理由は、そこに次世代のビジネスモデルがあるからだ。インターネットは金にならないと長い間言われ続けてきたが、やり方を変えればビジネスとして成り立つことを、いろんな企業が証明して見せた。そしてWeb2.0が象徴する次世代のやり方が、人々を虜にしている。

 旧Web 1.0では、まずユーザーは大量の情報に対してアクセスできるようになった。そしてWeb 1.5では、各ユーザーが情報を発信できるようになった。この時点では、いわゆる「ホームページ」というレベルで、各リンクなどはユーザーの手動による設置が必要である。

 そしてWeb2.0では、受信者が発信者でもあり、コミュニティを形成する。相互のリンクは半自動的に構成され、シームレスにつながるのだという。

 これをビジネスというメガネをかけて見てみると、アフェリエイトやAmazonのカスタマーレビューといったユーザーの反応が商品の価値を補強し、機会損失を埋め、死蔵されたニッチ商品が金を生むようになる、といった姿が見えてくる。

 だが待って欲しい。確かにこれらのシステムが誕生したということは画期的な事ではあるのだが、すでにそれはリアル社会で商売人が体で覚えてきた、「評判商売」と同じなのではないか。

 あそこのものは品がいい、あそこはいつもオマケしてくれる、店員の愛想が良い、というような評判で人が集まるということは、江戸時代では利かないぐらい昔から普通に行なわれてきたことだろう。

 もちろんリアルな口コミと、ネットでの評判を同じ規模で考えているわけではない。だが考え方は単純で、ネット社会ではこれまで消費者が評判を口にするというシステムがなかったから、バーチャル口コミというものが成立しにくかったに過ぎない。

 これをシステマティックにやったらどうなるか。そしてそれがお互いにリンクすることで、リアル社会では限られた規模でしか成立できなかった口コミという広告宣伝モデルが、巨大規模で実現可能というところこそ、Web2.0型ビジネスモデル描くところであろう。

 これまでは鼻の利く商売人が体で覚えてきた物販のノウハウを、システムが肩代わりする。例えば現在ある形でのアフェリエイトは、すでに誰でもそれなりに儲かるという状況ではなくなっており、そこにはノウハウや商売っ気の有無で勝ち組・負け組の劇的な差が出る世界になっている。大半のアフェリエイターは、情報の無駄撃ちをしているわけである。

 だがそれを、「仕組み」が救ってくれるとしたらどうか。つまりノウハウのシステム化である。Web2.0が持つ潜在的な魔力とは、この辺にあるような気がしてならない。

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2017年06月23日 更新