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世界一の描写性能とは?――カールツァイス開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(2/3 ページ)

» 2006年12月27日 00時40分 公開
[永山昌克,ITmedia]

――御社には「Gレンズ」という高級レンズのラインアップもありますが、カールツァイスレンズとGレンズの位置付けの違いは? どんな住み分けがあるのですか?

白石氏: 当社にはベーシックな通常のレンズがあり、それ以外のより高性能なレンズも作っています。その高性能レンズの中で、カールツァイスと共同開発したものはカールツァイスレンズで、そうではない完全な自社開発ものはGレンズとなります。その住み分けを特に意識しているわけではありません。今後のラインアップや、どのような割り振りになるかは、お客様からの要望にも応えながら考えていきたいと思います。

ポートレートに適したやわらかいボケ

――α用の最初のカールツァイスレンズとして、85ミリと135ミリを選択した理由は?

加藤氏: 昔からカールツァイスといえば、すぐに思い浮かぶのはやはり85ミリF1.4のPlanarだからです。またミノルタ時代から、ポートレートに強いαシステムということを訴求してきましたので、その流れで85ミリへのこだわりがありました。135ミリは、すでに「135mm F2.8[T4.5]STF」というレンズを出していますが、これは特殊効果フィルターを組み込んで独特のボケ味を追求したレンズです。それとは別に、より明るいレンズが欲しいというお客様の声もありました。

末吉氏: 初期のミノルタのαには、135ミリF2.8というスペックのレンズがありましたが、それ以降はなくなっていました。システムを拡張する狙いと、他社にはないレンズを1本作りたいという思いから、135ミリでF1.8、最短撮影距離72センチという最高のスペックを目指しました。

――両レンズともフルサイズ対応になっていますが、ボディ側の将来的な展開として、現状の「α100」が採用するAPS-Cフィルムサイズ以外のフォーマットへの期待が膨らみますね。

末吉氏: 今後のことはご想像にお任せするしかありませんが、α100のためだけにこれらのレンズを作ったのではありません。

――どんな使い方を想定して設計していますか?

末吉氏: 「Planar T* 85mm F1.4 ZA」はついてはポートレート撮影を念頭に置き、それに適した収差補正にしてあります。ミノルタ時代からの伝統であるバックのボケのやわらかさがポイントのひとつです。一方「Sonnar T* 135mm F1.8 ZA」は、やわらかさを狙いつつも、85ミリとの比較ではやや硬めに仕上げています。想定する用途としてはポートレートだけでなく、無限遠付近で撮る風景からマクロレンズ的な使い方まで幅広くお使いいただけます。つまり、これらのレンズの味がいちばん出やすいおいしい部分は、85ミリはポートレート用の撮影距離で、135ミリは無限遠から最短までの撮影距離をバランスよく仕上げているといえます。

photo ポートレート撮影に使いやすい焦点距離と開放F値を備える「Planar T* 85mm F1.4 ZA」

――85ミリのやわらかさを狙った設計とは具体的にはどんなことですか?

末吉氏: 基本的なお話として、球面収差がいちばん高い部分をマイナス側にするすなわちアンダー補正にするとバックのボケがやわらかくなります。ただそれをやりすぎると、前ボケが2線ボケになる傾向があります。そこで、前ボケが汚くならないことに留意しながら、後ボケがきれいになるような設計にしています。

――カールツァイスらしい画質や味とは何でしょうか?

末吉氏: 一概には言えません。例えば、これまでに他社から出たカールツァイスレンズの場合でも、レンズごとに画質の傾向やキャラクターはまったく異なります。唯一言えることは、現段階では世界一の性能を出すことと、自信のないものは絶対に出さないことの2点です。そのほかには、コーティングの技術などでヌケをよくすることや、ヌケをよくすることで色の純度を高めることなどもあります。

photo 加藤氏「内面反射が生じないような鏡胴の構造にしたり、必要な部分には植毛を施すなどして、フレアの発生も徹底的に抑えています」

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