ITmedia NEWS >

れこめんどDVD:「Little BRITAIN/リトル・ブリテン ファースト・シリーズ Vol.1」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2007年04月13日 08時59分 公開
[龍崎登,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 首相秘書官として働くのはオカマ風ゲイ「セバスチャン」

 首相に想いを寄せながら、政治的に首相に接触してくる人間を全て恋敵と見なし攻撃する。首相や王室いじりはUKコメディのお得意分野。

 個人的にもハマッたのがダイエット講座の暴君講師「マージョリー」

 見るからに太っちょの講師で、メンバーの体重を測るのも目分量というテキトーさ。インド人の話す英語を完全無視する傲慢な人物。メンバーの人間は太った講師にデタラメなダイエット法を学び、太った講師に「デブ」呼ばわりされる始末。

 最も際どい設定と言えるのが、実は歩けるのに車椅子に乗って怠けている男「アンディ」と、それを知らずにひたすら彼を世話する「ルー」。健常者の「アンディ」は、介護ヘルパーの「ルー」を気まぐれで散々振り回し、見てない隙にプールの高台から飛び込んだりして遊んだりもする。

 とまぁ、“ちょっぴり”変わった設定ばかりだが、一度観ただけで脳裏に焼き付けられる奇怪なキャラたちが、毎回ブラックかつシュールなネタで英国の伝統や格式を笑い飛ばすというドラマだ。

 「英国民はどんな人か?」で始まり、出てくるキャラは女装マニア、ゲイ、コギャル、オカマばかりという自虐ネタ。正直、全員うざい。だがビジュアルによるダイレクトなギャグだけでなく、その中に英国の人種差別や偏見が蔓延しているという事実、マイノリティやマジョリティの区分も含めて、英国の社会の縮図を感じ取った時にそれが笑いに変換される。

演じているのは2人だけ!?

 さらに、よーく観ると、これらの主要キャラを全部2人だけで演じているではないか。あれだけ色んなタイプのキャラをまさか2人で。それに気づいた時、そのうざい奴らが徐々にかわいく見えてくるから不思議。出演だけでなく、作・演出もこなす2人とは、今世界から最も注目を集める英国のマット・ルーカスとデヴィッド・ウォリアムズ。2人が創り出す憎めないキャラクターに中毒患者が続出し、ドリームワークスによる映画化も検討中。今後さらなる熱狂が来ることは間違いない。

 現在日本ではシーズン1の全8話のうち、4話を収録したVol.1が発売中。シリーズの世界観がわかる映像特典も収録したVol.2は4月30日に発売される。

単なるおバカ作品ではなかった

 ここにきて「モンティ・パイソン」の再来とまで評価されているのは、シーズン1すべてを観た人がこの「リトル・ブリテン」は単なるおバカではないからと気づいたからだろう。奇怪なキャラクターたちだけで英国を語り、英国の今を面白可笑しく映していくという風刺が効いているのはすぐわかる。

 それよりも英国民を習い、もう少し斜めに観てみよう。実は何より面白いのはこういったカリカチュア化された奇抜な人間ではなく、その人たちをフツーに受け入れている周りの人たちなのかもしれない。「モンティ・パイソン」のスケッチに例えるなら、ジョン・クリーズ演じる有名なバカ歩き(シリー・ウォーク)自体が面白いのではなく、それが国民に受け入れられ国の省に登録されているという設定が笑えるのと同様に。

 「英国民はどんな人か?」で描かれているのは、差別も自虐ネタも平気で受け入れる周りの国民全体だったのかもしれない。自ら卑下しながらも、その全てを国全体で笑い飛ばすイギリス、だからこそ、ああ〜偉大なる国家「リトル・ブリテン」なのだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.